子ども若者編集部の会議で議論をする石井さん。現在までに20年以上にわたり不登校新聞に関わり続けている
【写真】ボツになった企画の「お墓」

 不登校新聞では毎月第3日曜日に、「子ども・若者編集会議」を行っている。

「参加するのは15人くらいで、会員は80人ほど。世代は入れ替わってきていて、今は中心となるのは20代前半くらいですね。かつて不登校で今は学生だったり、何もしてなかったり、いろんな立場の子がいます。現在、リアルタイムで不登校の子は2~3割くらいですかね」

 1~2回、取材に参加すると、彼らは自然に編集部から「卒業」していくそうだ。

 編集会議では、まず名前と今日来た理由などを話して、その後、みんなで話し合いたいことを紙に書いて出し合う。そこから、テーマごとに分かれてディスカッションを始めて企画が決まり、記事の作成を目指すのだ。

不登校新聞編集部にあるボツになった企画の「お墓」。年に1回、取り出して供養をしているとか

「でも8割くらいは、ディスカッション自体を楽しみに来ている感じですね。“なんで不登校って罪悪感を感じるのだろう?”などというテーマで議論ができると、やってよかったなと思います。

 それで(議論のあと)記事にしてもらいたいなと思うんだけど、なかなか記事になっていない(笑)。ほかにも『不登校かつLGBT』とか、『リストカットと私』とか、そういう企画がどんどん出てきます」

 石井さんが編集会議で参加者に伝えるのは、「私だけが救われる取材をしに行きましょう」ということだ。

「編集会議に来る子たちは、“自分の経験を活かしたい”“不登校の経験を活かして、不登校の人に役立つ取材をしたい”と言います。それだけ不登校をしていた自分を責める気持ちや、罪悪感が強いからです。

 でも、まず他人の役に立ちたい気持ちをあきらめてもらって“私だけが救われるために話を聞く、そういう取材をしましょう”と言います。“私が悩んでいること”を伝えてください、とね」

 すると子どもたちは、実際に今抱えている切実な悩みを取材対象者へ打ち明ける。

「これから大学に進学しようか悩んでいる」

「不登校の自分はこの先、生きていけるのか」

「バイト先で付き合っていた彼氏がいたんだけど、別れて違う女のほうに行っちゃってムカつく」

リリー・フランキーが“記者”に送った言葉

 彼らはプロの記者ではない。あくまでも素人である。ましてや、ひきこもりがちな人も珍しくない。

そもそも編集会議が“遅刻、早退、バックレ歓迎”なんです。取材当日も、来ると言っていた子が来ないなんてことは日常茶飯事。行きたいのに行けない人も多い。

 でも、本人からすれば、本当に行きたい気持ちはあるんです。だから必死で来ようとする。道に倒れ込んじゃった子とか、取材の重圧で道に座り込んじゃった子から電話がかかってきて、“じゃあ、迎えに行こうか”と向かっている途中で、大丈夫になったからと連絡があって、合流したり……」

 著名人を前に緊張して、どうしていいかわからなくなり、思わずその場で友達にメールで相談してしまう子もいた。取材中であるにもかかわらず、大リーガーのまねをして緊張をほぐすためにガムを噛むという、とんでもない行動をしてしまうこともあった。

「インタビューの途中で寝てしまったり、まったく関係ない質問をして記事にならない取材になっちゃったり……。そんな0点の質問もあるけれども、私たちには出せない100点以上の質問、取材をしてくることもあるんですね。

 私は、彼らの自己実現のためにとか、不登校の人たちを支えるために取材に呼んでいるわけではなくて、すべてはいい取材をするためなんです」

編集会議では企画方針などをめぐり熱い議論が続く。当事者視点の記事づくりがモットー

 最近は俳優としても活躍するタレント、リリー・フランキーさんのインタビューの際は、不登校経験者8人が参加した。

「ひとりずつ相談するので、“はい、次の人”という感じで、まるで問診のようでした(笑)。ある子が“不登校だから自分に自信が持てない。何をやっても情緒不安定で困っている”という悩みを打ち明けたんです。するとリリーさんは、“若いから情緒不安定なんだ。情緒が不安定じゃない人は、情緒がないんだ。はい、次の人”って(笑)」

 インタビューをひととおり終えて、最後にリリーさんはこう語ったそうだ。

「“あのね、きみたちは若者なんです。つまり、バカなんだ。あなたたちが考える未来なんて絶対に当たりません。だから安心していいんだよ。そんなに不安になって、こんな自分にならなきゃとか、思わなくても大丈夫”と──。グッときましたね」

 言われた子どもたちも、「あー、なるほど!」と大きくうなずいたという。