友人たちの結婚に焦る
彼女の前に現れたのは

 ところが30歳を越えると、大学の同窓生たちが次々と結婚していったという。

「焦りましたね。恋愛経験も少ないし、私は結婚できるのかしらと不安でした。そんなときに通販会社の御曹司と称する男性Aに交際を申し込まれたんです」

 学生時代はラグビーで鍛えたというマッチョで、はきはきと語る清々しい青年実業家に美優さんは夢中になる。

「知り合ってすぐに両親を紹介されたので、本気で結婚を考えてくれていると有頂天になりました。その直後に“会社の将来のための投資だから”とせがまれ、お金を渡すことが続いたんです。今から思うと本当にバカでした」

 額がエスカレートしていくうちに、だんだんと不信感を募らせた美優さん。ところが男性は「いずれ僕と君の会社になるんだから、今から2人で会社の未来をつくっていこう」と言葉巧みにもちかけてきたという。「もう少し」「もう少し」と言われるままに、1年ほどで貢いだ額は600万円──。

「“もう、貯金はないから”と渋ると、彼と連絡が取れなくなってしまったんです」

 そこで美優さんは、男性から渡された名刺の会社に乗り込んだ。するとそこには男性から紹介された両親とは全く別人の父親と母親の姿が。しかも男の実家は通販会社ではなく、家族で経営している小さな町工場だったのだ。

「私が事情を説明すると、2人は関わりたくないといわんばかりに冷淡でした。すぐに警察に通報すると、彼に結婚詐欺の前科があることがわかったんです。私が紹介されたのはレンタル家族。まんまと騙されました」

 1か月もたたないうちに、結婚詐欺の男が逮捕されたと警察から連絡があったが、貢いだお金は一銭も戻らず。このときに、美優さんは貯金だけでなく、結婚に対する期待も失ってしまったという。

「三日三晩泣いて暮らしました。職場の人たちには“結婚する”と言っていたので、やめざるをえなかった。このまま死んでしまいたいと思っていました」

 だが結婚詐欺に遭って自殺するのは、寂しすぎる人生だと気を取り直した美優さんは、3か月後に別の病院に転職した。

「私はもう2度と結婚することはないと思うと、悲しくて仕方がありませんでした。そこで騙されて貢いだお金を取り戻そうと思いました。男に貢いでなくしたなら、今度は男から貢がれるべきだと」

 そこで再び、交際クラブでのパパ活を決意する。ところが30歳を越えた美優さんへの、デートのオファーは激減してしまったのだ。

「女を“ウリ”にする時期が過ぎてしまったと悔しくて仕方ありませんでした。でも交際クラブの担当者から“少し年配になるけど、30歳を過ぎた女性を好む男性もいる”と慰められ、オファーを待っていました。1人、2人とオファーがポツポツと来たころに、詐欺に遭う前にデートしたパパから愛人契約を持ちかけられたんです」