学校や世代で“温度差”も

 神奈川県の公立小学校教員・U先生(30代)は、「困ることは特にない」とのこと。

「うちの小学校は、『学校だより』のほか、遠足や運動会などのお手紙を、アプリでメール配信するようになり、まぁまぁ脱プリントが進んでいます。最近は、職員会議もペーパーレスです。

 正直そこまで『ラクになった!』という実感はないのですが、そういえば印刷機のところに行く回数は確実に減りました。もし『お手紙の配布に戻せ』と言われたら、『それは無理です』という感じ。最近早めに帰れるようになったのも、そういう小さな業務削減の積み重ねのおかげかもしれません」

 脱プリントも、地味ながら、先生の多忙化解消に一役買っているようです。

 なおアプリ導入後も、少数ながら「紙のお手紙」を希望する家庭もあるため、各クラス2、3枚はお手紙を配っているといいますが、「負担ではない」とのこと。スクールサポートスタッフさんが「誰と誰に配る」というメモを添えて教室まで届けてくれるので、担任の先生の手間はほぼないのだそう。

「『脱プリント以前の問題』もある」と指摘するのは、同じく神奈川県の公立小学校教員・N先生(50代)です。

「市の教育委員会から、子どもたちに配るチラシが毎日大量に送られてくるのですが、これはいくらIT化を進めても減らせません。教育委員会が後援する事業の案内も多いですが、こんなに多いと保護者も困るでしょう。どこかで止めたほうがいいと思うのですが」

 ペーパーレス化に対する教員の反応には、「世代間での温度差もある」と言います。

「若い先生は『便利だから』と言って、どんどんペーパーレスを進めていきますが、画面だけで見ているから、チェックが甘くなることがあります。それを年配の先生たちが心配する面もある。どちらの気持ちもわかりますね」

 関西の高校教員・うたこ先生(40代)も、やはり教員によって、ペーパーレス化への反応は異なるとのこと。

「年長の教員や、文系科目の教員のなかには、やはりペーパーレスについてこられない人もいます。学校種によっても違いがあるかもしれません。高校では『情報科』という科目の教員が中心になりIT・ペーパーレス化を進めることがありますが、小中学校ではITが得意な教員が、ボランティアで担うことが多く、学校によって進み具合に差が出やすいのではないでしょうか。

 うちは最近、生徒会選挙もオンラインで行いましたが、とてもラクでした。開票作業も不要だし、一瞬で終わります。私は授業も、提出物や小テストも、すべてオンライン(google classroom)でやっていますが、管理は圧倒的にしやすいと感じます」

 脱プリントが苦手な先生もいないわけではないものの、実際に進めて慣れてくると、やはり「便利」「ラクになる」という声が多いようです。保護者も多くが待ち望んでいますから、脱プリントやペーパーレス化、これからもどんどん進めてほしいものです。

大塚玲子(おおつか・れいこ)
「いろんな家族の形」や「PTA」などの保護者組織を多く取材・執筆。ノンフィクションライターとして活動し、講演、TV・ラジオ等メディア出演も。著書は『さよなら、理不尽PTA! ~強制をやめる!PTA改革の手引き』(辰巳出版)、『ルポ 定形外家族 わたしの家は「ふつう」じゃない』(SB新書)、『PTAをけっこうラクにたのしくする本』(太郎次郎社エディタス)など多数。定形外かぞく(家族のダイバーシティ)代表。

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