戦没者のため、平和のために続く闘い

 具志堅さんの認識における沖縄と福島の共通点はずばり、「国策による被害」だ。そのことを具志堅さんは、7月に入ってスイスはジュネーブに飛んで、さらに再確認できたようである。

6月30日に一部で避難解除されたものの、大熊町では今も除染土などの廃棄物が並ぶ 撮影/渡瀬夏彦
【写真】ハンストの場へ激励に来た玉城デニー知事

 7月4日、具志堅さんは、国連における先住民の会議に沖縄代表の1人として参加し、意見を述べる機会を得た。

 会議進行の都合上、予定していたとおりのスピーチがかなわず残念な部分もあったようだが、会場を移してのサイドイベントでは、たっぷり1時間以上にわたって話をすることができたという。

 具志堅さんが振り返る。

「2つのことを話しました。1つは、遺骨まじりの土砂が、米軍基地を建設する埋め立て材料に使われるおそれがあるということ。これは沖縄だけの問題ではなく、日本兵、米兵の骨も海へ投げ捨てられるおそれがあるということをわかってください、という話。

 もう1つは、ウクライナ危機に乗じる形で『台湾有事』への備えが必要だと叫ばれるようになっていて、沖縄の島々が再び戦場になり、私たちが殺される危険があります。助けてください、という話」

 そして具志堅さんは、笑顔でつぶやくのだった。

「とにかく国連という場所へ行かせてもらってよかったです。世界にはたくさんの先住民が、同じような悩みを抱えているということがわかったし、みんなで連帯して頑張っていこうという意思確認もできました。これからの可能性に、希望を抱くことができました」

計4度のハンストを行ってきた具志堅さん。さらには遺族公聴会を開き、そこでの声を政府に届ける予定だ 撮影/渡瀬夏彦

 そして、沖縄に帰ってきた具志堅さんが今まさに力を入れようとしていることがある。

 それは「遺族公聴会」だ。

 そもそも具志堅さんたちは、国や県に対して、当事者である戦没者遺族の声を聴きもしないで、遺骨まじりの土砂を採掘する計画を立てること自体がおかしい、ぜひとも遺族の声を聴いてほしい、と提言してきた。ハンストもそのための行動だ。だが、行政が重い腰を上げる気配はまったくない。ならば、自分たちで始めよう、と決断した取り組みが「遺族公聴会」である。

 その第1回が7月24日、沖縄県南風原町の南風原文化センターで開催された。その成果をもって、具志堅さんと仲間や協力者たちは、8月5日、衆議院第二議員会館で、政府(外務省・防衛省・厚労省)との意見交換会に臨む。

 死者の尊厳を守らない国が、沖縄の人々をさらに苦しめ、世界の平和さえ保てない状況をもたらす─。

 重く深いテーマを抱えつつ、世界中の人々が共感しうる普遍的な哲学に裏打ちされた具志堅さんの闘いは、あえて言えば、これからも希望に満ちて、続いていく。

〈取材・文・撮影/渡瀬夏彦〉

 わたせ・なつひこ ●沖縄移住17年目のノンフィクションライター。基地問題からスポーツ、芸能まで幅広く取材。講談社ノンフィクション賞受賞の『銀の夢』(講談社文庫)、『沖縄が日本を倒す日』(かもがわ出版)ほか著書多数