発達障害の当事者として伝えたいこと

『情熱大陸』や『徹子の部屋』への出演は、リトさんの知名度を劇的に押し上げた。発達障害の当事者からメッセージが届くこともある。

「僕が発達障害だとわかったとき、参考になるような人がいなかったんです。サラリーマンをやっていて、ある日突然、診断を受けて、そこから生き方を変えたという人の情報はどこにもなかった。だったら自分が道を作って、その先駆者みたいになれたらいいなと思ったんです

 発達障害の専門医の数は限られていて、初診まで2~3か月待ちという状況もざらにある。それにも増して、当事者にとって生き方の参考になるような「ロールモデル」の存在は希少だ。

「“毎日大変だけど、世の中にはこういう人もいるんだ”と思えるような存在に僕がなれたらいいな、と思ったんです。だから、この活動はやめちゃいけない。いつか自分が大成功したときに、これがひとつの道になる。そのためにツイッターの投稿履歴も全部、残しています。悶々(もんもん)としていたころの投稿をさかのぼって読むと、“この人はこういう道をたどってきたんだ”とわかるので」

リトさんの視線の先にあるのは……これから漕ぎ出していく「世界」。葉っぱ切り絵を軸にしつつ、講演、ワークショップなど活動の幅を意識的に広げている 撮影/渡邉智裕
リトさんの視線の先にあるのは……これから漕ぎ出していく「世界」。葉っぱ切り絵を軸にしつつ、講演、ワークショップなど活動の幅を意識的に広げている 撮影/渡邉智裕
【写真】見る人の心を揺さぶり想像力を刺激する「葉っぱ切り絵」の数々

 悩む当事者に、リトさんはこんなアドバイスを送る。

「僕がよく言うのは“場所を変える”こと。自分の短所ばかりが目立つところでは、どんどん自己肯定感が下がっていくだけ。僕自身は他人のスピードについていくことをやめて、自分のペースで集中力を発揮できる環境をつくったら、劇的に変わったんです。変化は怖いけど、無理に同じ場所にとどまり続けるより楽になることもあるんです」

 さらにもうひとつ、「自分を知る」ことも大切だと強調する。

「本を通して発達障害について知ると、なぜ自分ができないのか、そのメカニズムを頭で理解できるようになる。すると“こういう仕事に手を出すと絶対、失敗する”とわかるようになります。

 得意・不得意がはっきりすれば、自分を活(い)かす方法も探れる。僕の場合、極端な集中力を活かせる業界はどこか?というところから、葉っぱ切り絵にたどり着くことができました」