シーインの服の“質”は?

「すべての服をチェックできたわけではないですが、日本ではあそこまで質の低い、チープな生地を使った商品はないですね。生地の素材も相当に安い。だから安くできるわけだなと。シーインを見た後では、ほかの低価格アパレルブランドの服が高品質に見えるでしょう」

 この時期のため、商品は冬物が多く並んでいた。

シーインは生地の質が低く、そして薄い。例えばメルトンやコーデュロイといった冬物の通常厚めの生地も薄い。また天然素材ではなく合成繊維の服が多い。メルトンを例に上げると、本来はウール100%もしくはウール80%、90%などの高混率で少々合成繊維を入れる。

 それを濡らして熱を入れることによって縮めて、がっしりとした分厚い生地にすることで冬でも暖かい生地にしています。しかし、それをウール100%で今作るとなると、生地の原材料が高騰しているので、すごく高くなる。

 だから、低価格といわれているブランドはウールを使わず、ほとんどポリエステルだけでメルトンっぽい生地を作っています。それでも日本の低価格ブランドでコートは1万円前後はする。一応分厚さはあるし、遠目ではわからない。触ってみると合成繊維だなとわかるくらいのもの。

 シーインもこのような“ウールっぽく作った合成繊維”の生地を使っているわけですが、遠目から見てもわかるレベルで薄く、合繊特有の光沢を消せていないのですぐ合成繊維だとわかる。ファーも見るからにフェイクという印象で、ファーというよりモップのようでした」

 店には10代後半から30代前半程度と思われる若い女性がほとんどだった。

「店にいた人たちは、シーインで使われている素材の何が悪いのかわからなかったのかもしれません。こんなもんか、安いし形はそこそこかわいいし、という感じなんだと思います。確かにシーインで服を見ていた女性は“これ良い”“かわいい”と言ってましたから」

 近日オープンする常設店はポップアップショップ同様に若い女性が行列をなすのか……。

「常設店を作るのは逆効果なんじゃないかと思いました(苦笑)。ネット通販専用ブランドの実店舗は、商品の実物を見てもらって試着することでネット通販でさらに売り上げを伸ばす目的があります。しかし、シーインに限って言えば、店舗で実際の商品を見た方がネット通販で買う気が無くなる人が多いのではないかと思います」

 日本の激安ブランドも、シーインのような質の低い生地が使われた商品もあるという。

「ただ、それは“中にはそういった物もある”という話です。シーインは現在、アメリカで売れています。おそらく、“安いならシーインレベルの商品でいい”と、多くの人が買っているようです。(世界売上高2兆8000億円で日本の売上高は数百億円という噂)しかし、あの品質レベルを見る限り、日本では若い層だけでとどまって、ネット通販がメインということもあり、ネット操作を苦手とする年配層には広がっていかないと思いますね」