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ー ネット検索で“うつ”になる!
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ー “検索うつ”を引き起こす「カリギュラ効果」

 158人もの人々が一夜にして亡くなった──。韓国・ソウルの繁華街・イテウォンで起きた転倒事故から約1か月。10月29日の発生当時からSNS上では凄惨な現場映像が発信され、目にしてしまった人も多い。今その映像を見た人たちに異変が起きているという。

ネット検索で“うつ”になる!

「よく眠れないという相談が増えました。聞くと、イテウォンの映像を見ていたり、またはウクライナの戦争映像を見ていたり、と直接その場にいないものの映像を見たことでPTSDのような症状に陥っている人が多いです」

 と、都内の心療内科医が明かす。こういった症状を訴える人に病名はないが、

「当院では“検索うつ”という呼び方をしています。さまざまな事故映像などを検索して一時的なうつ状態に陥ってしまうことからこう呼んでいます。これらの症状を訴える方たちは、“見たくないのに見てしまう”、“検索が止まらなくなってしまう”という共通点があります」(前出の心療内科医)

 まさに“検索うつ”に陥っている女性がいる。都内在住の主婦・桂木さん(仮名・37歳)は7月8日、安倍晋三元首相が凶弾に倒れたときの映像を懸命に探し回ったという。

「確か金曜日の昼前ごろでした。私はショッピングモールで買い物をしていたんですが友人からのラインで安倍さんが撃たれたと知って、すぐさまベンチに座ってTwitterなどで検索をかけました。

 するとすぐに犯人が取り押さえられる様子などが出てきて。倒れている安倍さんはもう息をしていないように見えました。当時、“安倍さんの首に大きな穴があいていた”という情報が流れていて、その画像が見たくてずっと探していました。

 結局見つからなかったのですが。生前の安倍さんに対しては特段の感情はないです。アンチ安倍でもないし、支援者でもない」

 その日の夜、安倍元首相の死亡が発表された。桂木さんは、

「安倍さんは運ばれたときには心肺停止で蘇生措置を受け続けていたとニュースでやっていたので、私が見たあれが安倍さんの最期だったのかとすごく怖くなって。その夜からうつ状態に。やる気の出ない日々が続いて子どものサッカーチームの送迎があるのに起き上がれなかった」

 当時、桂木さんは自分がうつ状態に陥っているとはわからなかったという。

 自分が“検索うつ”だと気づいたのは、イテウォン事故だった。

「やっぱり安倍さんのときと同じように検索が止まらなくなってしまって。30日未明に30人が死亡という一報をニュースで見てからずっとスマホに張りついて画像を見ていて、韓国語も少しわかるので何を言っているかわかるんです。

 “チクショー足が痛い”という男性の声や女性の“触らないで!”という叫び声とか全部鮮明に響いて夜明けまでずっと見てしまいました」

 翌日もスマホに張りつき、家事もおろそかになったという。

「夫と子どもに“ちょっとおかしいよ”と言われ、心療内科の診察をすすめられました。そのときに自分は“検索うつ”だと知って、原因がわかるとすごく楽になりました。自分がおかしいんじゃないかって思っていたから。人が死んでいく映像を見るのが止まらないなんてそんな自分が嫌だったし、異常なのかなと。うつ状態に陥っていたと聞いて納得しました」