“検索うつ”を引き起こす「カリギュラ効果」

 カウンセリングスペース フィールマインド主宰の心理カウンセラー・小日向るり子さんに桂木さんのケースについて聞くと、

「うつ症状が引き起こされやすい状況だったといえます。人間は目で見る、耳で聞く、匂いを感じるなどの五感をたくさん使うほど頭に記憶が残りやすくなります。桂木さんの場合は、目と耳でその映像を強く感じてしまった」

 見たくないものを見てしまう心理はなんなのか。

「見てはいけないとか見ないほうがいい、と言われたりすればするほど見たくなってしまう心理状態のことを『カリギュラ効果』といいます。『カリギュラ』というのは1980年にアメリカで公開された映画です。

 過激な内容だということでアメリカの一部地域で公開禁止となり、そのことで逆に話題性が高まったというエピソードが語源です」(小日向さん、以下同)

 衝撃映像を見ているとき、私たちはどういう心理状態なのだろうか。

「本人の意識下では“見たくない”であっても、見るなとも言われていないのに見ている時点で、実は無意識では見たいという好奇心が働いている可能性があります。

 これは、心に刺激が欲しい、あるいは衝撃映像を見ることで、いわゆる『闇落ち』と言われる自虐的な心理が心の奥に隠れているのではないでしょうか。

 見続けるうちに当初の想像以上に気持ちが暗くなっていってしまい、まるで自分が体験したかのような状態になってしまうんです」

 検索をしている段階で、すでにうつなのだろうか。

「抑うつ的な心理状態になっている可能性はあります。心がネガティブになっていると、その状態に融合できる悲惨、残虐なものを見つけて一体感を持って安心したいという心理状態になりがちです。

 そのため、周囲は本人がネガティブな気持ちに支配されているときにそうしたワードを検索することを心配するのですが、当人たちは一体感を感じて安心感を得ているということが往々にしてあります」

 という。最後にひとつ小日向さんは付け加える。

「ただ、同一化が働きすぎて当人が模倣してしまう可能性があります。だから、安心感が得られるならいいよね、とはならないのですが」

 うつが一転して躁状態になると、犯罪に走ってしまうケースもあるのだ。次のページのチェックリストに当てはまったあなたは“検索うつ”かもしれない。早めに専門家に相談してほしい。