メタバース、SNSで徳川家広報活動を

 現在は徳川記念財団の理事長も務める家広さん。19代継承を記念し、広島の老舗菓子店、にしき堂が製作した和菓子『楓果』の発売にあたっては、自ら何度も試食を繰り返した。「継承に関する儀式が重なった昨年が、いちばん忙しかったかも」という多忙な日々のなかで、SNSやYouTubeなど、これまでにないさまざまな試みにも精力的に挑戦してきた。

 コンピューター内に構築した、3次元の仮想現実世界で、日本初のメタバース『江戸バース』も、ユニークで新しい取り組みのひとつ。家広さんは、巨大な仮想空間上の江戸の町の監修を担当。昨年7月に江戸城周辺の土地NFTを販売したところ、なんと1時間で完売! 元サッカー日本代表の本田圭佑氏が購入したことでも注目された。

「現在も鋭意制作中で、今後は江戸城に入城もできます。大河ドラマの放送が終了する年末ごろ、全面的にメタバースとして開ける予定です」

 NHK大河ドラマで家康が主人公となるのは、1983年に滝田栄が演じた『徳川家康』から40年ぶり。家広さんは新しい“家康像”に期待を寄せる。

「おそらく乱世が大好きだったであろう信長や秀吉と違い、家康公は平和を切実に希求していたと思います。武田信玄や上杉謙信のような派手なエピソードはありませんが、若いときは苦労の連続で、優しい人柄。

 戦国時代ではかなり異質で、平和の時代を生きる私たちの感覚に近いのではないかと思います。そういう意味でも、現代の若者の代表である松本潤さんが演じられるのはぴったりなのかもしれません」

 ドラマの開始とともに、令和の新当主となった家広さん。

「これからは、もとの仕事だった文筆業を早く再開したいです」

 と語る、19代当主の今後の活動にも注目したい。

<取材・文/植木淳子>