澤井:それは師匠の口から聞きたかったですね……(笑)。好楽さんとしてもとむさんを真打にするのは急な決断だったのですか?

好楽:急というわけでもないんだけど、とむはお笑い芸人時代を含めるともう芸歴20年を超えている。そろそろ真打にするべきだと思ったんだよ。

澤井:しかも真打になったら改名されるんですよね。

とむはい! 錦笑亭満堂(きんしょうてい・まんどう)という名前になります!

好楽新しい名前は、小朝がつけてくれた名前なんだよ。「満堂」は中国語で「人々が満員になった状態」を意味して、「錦」は「金」と同じで縁起がいい。「満席のお客さんを喜ばせて売れ続ける」っていう想いを込めてつけてくれたんだ。小朝は凝り性だから、名前をつけるのに1か月半ぐらいかかってさ。

澤井:とても良い名前ですね! 縁起も良いし金運も上がりそう!

とむ:しかも三遊亭から新しい亭号に変わるので、今年1年は勝負の年ですね! まあ正直言って荷が重いですが……(笑)

澤井:新しい亭号を与えたのに理由はあるんですか?

好楽大きい名前を襲名させると、「この亭号を汚しちゃいけない」って気が張るでしょ。だから改めて奮起してもらおうという意味で大事なんですよ。名前なんてすぐ継いだ方がいいというのが、私の師匠の頃からの教えですね。落語協会とか芸術協会に所属していると、真打になるかどうかの権限は席亭が持っているけど、ウチはそういう縛りもないからさ。どんどん新陳代謝して活気が出ればいいんですよ。

とむ本当に不思議な話で、名前を頂戴したら急に責任感が出始めて。この錦笑亭を大きな亭号にしていかないといけない、弟子をたくさん獲れるような人間になろうという気持ちがと出てきて。そんなことはついこの間まで思ってなかったんですけどね。

澤井:しかも来年の1月には武道館で公演されるんですよね。

とむ:はい、昇進披露全国ツアーということで全国を回り、24年の1月の最終公演を武道館で行います! 落語家として武道館で公演するのは3回目らしいですね。1回目は小朝師匠が、2回目はさだまさしさんや志の輔師匠ら大勢がイベントのような形で出演されたらしいので、真打の披露公演としては初めてになりますね。

澤井:自分でハードルをどんどんあげている気が(笑)

とむ:やれることはなんでもやりますよ。先日は「二日酔いでいさせて」という楽曲を逢信したり、宙に浮いて落語をやる「スーパー落語」も披露する予定です。鶴瓶師匠には「そんなことしてないで世に羽ばたけ」って言われましたけど(笑)

好楽:とむは顔も広くて、人付き合いも上手いからさ。芸人は色んな人に可愛がってもらってなんぼの世界。そこは私ととむの似ているところだね。

澤井:本当にお二人のお話から、和気藹々とした雰囲気を感じて、僕も入門したくなるような素敵な一門でした。この度はお忙しい中ありがとうございました!

好楽とむ:ありがとうございました!


構成・文 佐藤隼秀  撮影・吉岡竜紀