医療経済ジャーナリスト・室井さんが米国の「ムダ医療リスト」を基に解説

定期的に大腸がんの内視鏡検査

 便潜血が判明したら精密検査としておしりから内視鏡を入れて調べます。内視鏡を使った検査でがんを発見できなかった場合は、がんになるリスクはその後10年間にわたって低いとわかっているので定期的に受ける必要はありません。ムダな検査のたびに1万5000円ほどかかっています。

子宮頸がんが心配だから念のためコルポスコピー

子宮頸がんは子宮の入り口部分にできるがんです。コルポスコピーはチューブ状のカメラを挿入して拡大鏡で観察する検査ですが、目で見て異常がない場合はカメラで見ても変わりないといわれています。実施内容次第で5000~1万円ほど。特に高額ではありませんが、意味がないならば受けたくないですよね。

閉経後はDEXA法による定期的な骨密度チェック

 DEXA(デキサ)法は骨密度の低下をエックス線で定期的に測定するもので、閉経後の骨粗鬆症予防として頻繁に行われがちです。骨密度は短期間で変化するものではないため、実は高齢女性でも健康であれば10年以内に繰り返し検査する必要はないと報告されています。日本だと約4万円かかります。

人間ドックのPET検査でがんを早期発見

 PET検査は細胞の動きを見ることにより全身の病気を診断できる。しかし、アメリカ核医学会は、「PET検査は健康な人のがん検診に使ってはならない」と断言。ムダな放射線被ばくが起こるうえに、がんでないのに陽性となることもあり、意味のない治療につながる場合もあるのです。無症状なのに「もしかして」という不安で約10万円もする検査を受けていないでしょうか。

前立腺がんを見つけるためにPSA検査

 PSAは前立腺で発生するタンパク質で、PSA量が増えるとがんを疑われます。アメリカ家庭医学会が「もしがんになっても害は少ないが、治療による副作用は非常に大きい。医師は患者に十分に説明をしたうえでPSA検査の同意を得なければならない」と注意するほど。前立腺がんの手術となれば30万円の負担、精密検査だけでも10万円ほど。手術後に性機能が損なわれてしまうおそれもあります。

軽い頭部外傷でCT検査

 頭を打った程度ではほとんどがCT検査で診断する必要がありません。ムダに放射線にさらされるのはむしろ危険で、将来的にがんになる可能性を高めるおそれが。特に子どもは放射線に対する感受性が高いと指摘されています。日本でCT検査を実施するとおよそ3万円、3割負担でも1万円になります。

超高齢者に悪玉コレステロールを下げる薬

 悪玉コレステロールを下げるための薬剤を服用すると、認知、神経疾患、筋肉障害といったリスクが増えます。85歳以上ではメリットよりも副作用によるデメリットのほうが高まるといわれています。薬剤費は年間3万円ほどなので10年となれば30万円、ちりも積もれば大きいですよね。

爪水虫なら菌を殺す飲み薬を

 水虫の原因は白癬菌ですが、実は爪に症状があるおよそ半分の人は白癬菌による感染ではないとのこと。そもそも真菌がいないとなれば、3~6か月といった長期にわたって薬を服用するのはむなしいもの。知らずに飲み続けた薬剤費用は5万円ほどに。

室井一辰さん(医療経済ジャーナリスト)
室井一辰さん(医療経済ジャーナリスト)
【画像】検診時はご注意を!放射線に弱い「臓器5つ」

医療経済ジャーナリスト。東京大学農学部獣医学課程卒。著書に『絶対に受けたくない無駄な医療』(日経BP社)など。

<取材・文/難波安衣子>