同時代を生きた仲間は、私の宝物

2月17日に浅草公会堂で行われた『夢コンサート』では、カバー曲のほかに『みずいろの手紙』を披露すると客席はあべの歌声で“あのころ”にー
2月17日に浅草公会堂で行われた『夢コンサート』では、カバー曲のほかに『みずいろの手紙』を披露すると客席はあべの歌声で“あのころ”にー
【写真】「すごい可愛い子」と評判だった高校時代のあべ静江

 歌番組が激減したこともあり、テレビであべを見る機会は少なくなったが、地道に歌手活動を続けていた。そのひとつが、日本歌手協会の公演などだ。協会の初代会長は東海林太郎さん。往年の歌手が名を連ねる由緒ある団体に、1994年から参加し、大先輩たちとステージで共演してきた。'05年からは理事を務め、新人歌手にステージでのマナー指導なども行っている。

 あべにとって歌は「いつもそばにあるもの」と言う。

「生まれたときから母の歌を聴いて、身近に歌があった。

 私自身は歌手になるつもりはなく、2年間の約束でデビューしたのに(笑)、50年歌い続けて。もう私から切り離せないものなの」

 50年を振り返って、ポンと頭に浮かぶのは、どんな場面なのかと問うと、「やっぱり『夢コンサート』ですね」

 意外な答えだった。『NHK紅白歌合戦』、リサイタル……全盛期の華やかな光景が浮かぶのかと思ったら、現在も出演継続中の公演の名が挙がった。『夢コンサート』は、'70~'80年代に一世を風靡したスターが集結し、当時のヒット曲を披露するショーで、毎年全国各地の会場で行われ、あべは司会も務めている。

 2月、都内で『夢コンサート』が開催された。オープニング、あべは膝丈の赤いドレスで登場。司会のパートナー江木俊夫と軽妙なトークを展開する。

「しーちゃん、脳梗塞と聞いて、心配したよ、やせちゃったかと思ったら……体形が変わってなくてよかった……ますます太って……違う違う、ますますきれいになって」

 と、あべをイジる江木。会場は温かい笑いに包まれる。三善英史、伊藤咲子、晃(フィンガー5)など昭和を彩ったスターが続々と登場し、自身のヒット曲と昭和の名曲を披露。あべは山口百恵さんの『秋桜』をカバー、そしてブルーの衣装に着替えて『みずいろの手紙』を語りかけるように歌い、時折客席に手を振って応える。透き通るような高音が耳に心地よく響く。

 観客はリアルタイムで昭和歌謡を聴いていた中高年世代が多いが、親と一緒に楽しむ若い人の姿も見える。コンサートが終わると、あべはロビーに出て、気さくにお客さんと話し、記念撮影に応じる。和気あいあいとした雰囲気が伝わってくる。

「'70年代って長く歌い継がれる名曲が多いなと、改めて思います。お客さんに喜んでいただき、ステージに立つ私たちも楽しんでいるんです。『夢コンサート』の仲間は本当にチームワークがいいの。

 '70年代当時はみんな忙しくて、テレビ局などで顔を合わせても、挨拶を交わすのがせいぜい。時を経て、ようやくゆっくり話ができるようになって。同じ時代を駆け抜けた仲間だから、思い出も共有できるし、まさに同窓会のよう。今度は、こういうことをしようと、みんなで作り上げていく喜びもあるんです

 とあべ。年を重ねてくれば病気をしたり、身体に不具合が起きたりすることもある。お互いに労り、フォローし合うのも、同年代のいいところだという。

「脳梗塞のあと、つくづく思ったの。顔を見てホッとできる人たちと仕事ができるって幸せだな、と」

 それは自身がコツコツ積み上げてきた歌手活動と人間関係の結果だろう。