目次
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ー 親の希望がわからず手厚い介護でも後悔
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ー 介護は4段階!看取り後の自分のケアも
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ー 介護で後悔しないために

「介護に携わる多くの家族を見てきましたが、看取る家族と親との思いが100%満たされるということは、ほぼないと感じています」

親の希望がわからず手厚い介護でも後悔

 そう親の看取りの現状を話すのは、介護者を支援するNPO法人「UP TREE」の代表、阿久津美栄子さん。後悔のもっとも大きな理由は、看取りまでの介護の過程で「親の希望を叶えられなかった」という思いからくるものだと話す。

介護される側(親)がどのように死を迎えたいかといった死生観を、介護する側(子)に伝えていないことが問題だと思います。介護者(子)は、介護が始まって初めて“こういう施設がいいかな”“やっぱり在宅がいいかな”と悩むことが多いのですが、親の望みがわからないまま進めるので、どれだけ手間や時間、お金をかけたとしても、“あれでよかったのか”という気持ちが残ってしまうのです」(阿久津さん、以下同)

 親は“子どもに迷惑をかけたくない”と言いながら、介護の方針を子どもに丸投げ。子ども側も介護保険制度を熟知している人が少なく、結局、ケアマネジャーなど介護専門職者が主導に。介護にまつわるさまざまな決定が“人任せ”になってしまうことも後悔につながっていると阿久津さんは指摘する。

「介護保険制度が始まって20年以上過ぎていますが、残念ながら状況は変わっていないと感じています」

 そんな阿久津さんも、実は後悔を抱えながら両親を見送った一人。ダブル介護の末に、42歳で両親を看取った。

「母親が肺がんで倒れ、わかったときにはすでに余命3か月と言われました。突然すぎて親の死と向き合う準備ができず、ただただ怖いという感情ばかり。結局、亡くなるまでに3年ありましたが、その間も“いつか元気になる”という気持ちが先行し、最期が来ることを認めるのが難しくて。

 病床で母が“お墓を買いたい”と言ったときも“縁起が悪い”と大反対してしまい……。理想のお墓があったのかもしれません。今でも、どうして母の意思を尊重できなかったのかと思っています」

 同時期に同じくがんで亡くなった父親とは、もともと反りが合わなかったこともあり、介護の期間中も些細なことで言い合いになってしまったと悔やんでいる。

「家族だからこそ、遠慮なく言いたいことを言ってしまいました。でも、介護の先にある死をきちんと認識できていれば、親の希望を冷静に聞くこともできたし、ムダなケンカをしている時間はないと思えたはず。親の看取りを通じて、介護では残った時間を意識することが大切だと学びました」