高齢女性受刑者が増える社会的背景

 女性受刑者全体における高齢女性受刑者の割合は、ここ30年ほどで10倍に増えている。これからの超高齢社会では、ますます増加することが危惧される。受刑者を増やさないためには、経済的な自立を目指すことも必要だ。

刑務所では、さまざまな職業訓練が行われていて、介護、エステ、ネイル、パソコンなどの技術や資格が取得でき、社会復帰に役立てています。中には、ハローワークが常駐して、出所後に向けた就労支援をしている刑務所もあります。女性は長生きなのに低賃金、低年金になりやすく、貧困にも陥りがちです。自立して働き続けられる社会をつくることが、女性の犯罪を減らすことにつながるのではと考えます」

 また、窃盗は摂食障害や精神疾患とも関わりがあり、病気が引き金で犯罪者になってしまうこともある。

犯罪の種類によっては、刑罰よりも治療や教育、生活支援が必要だと考えられるケースもあります。受刑者の年齢や特性に合わせ、刑務作業と指導を柔軟に組み合わせた処遇を行えるようにする改正刑法が昨年、成立しました。再犯防止につながることが期待されています」

刑務所は社会の縮図”という言葉があり、受刑者の実態は社会問題を映し出している。

「塀の中は経済不安や生活不安が凝縮した場所のように見えます。また、『塀の中のおばあさん』が増えることは、介護が必要な受刑者が増え、刑務所が福祉施設化することを意味しています。刑務所の運営は税金で賄われているため、『税金で犯罪者を手厚く支援するのはいかがなものか』と考える人もいるでしょう。ただ、受刑者には、成育環境によって、本来受けられたはずの教育や支援、医療などを何らかの理由で受けられなかったケースもあると思われます。社会が税金を使ってその立ち直りを支援すれば『自分は見捨てられているわけではない』と受刑者が感じ、再犯から遠のく可能性もあります」