『塀の中のおばあさん女性刑務所、刑罰とケアの狭間で』(KADOKAWA刊 税込み1034円)※書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします
【写真】数値で見る高齢者の年間所得と、年金で暮らす高齢者夫婦の赤字額

必要とされるのは誰かが支えてくれる社会

 高齢女性受刑者への取材を通して、社会的な課題を考える必要があるという猪熊さん。

「教育や雇用の機会、寄り添い型の支援があれば、刑務所に入らずに済んだのではと思われるケースも多く、心が弱ったときに誰かが支えてくれる社会をつくっていくことが必要だと感じました。最近は貧困家庭などの子どもたちに食事を提供する『子ども食堂』の動きが活発ですが、その高齢者バージョンや、高齢者と子どもが一緒に食事やおしゃべりができる場があると、抱えている問題に周囲が気づきやすくなり、孤独や寂しさの軽減にもつながるのではないでしょうか。最後に、社会保障制度というと『負担』の話ばかりと思う人が多いかもしれませんが、『給付』もあります。社会保障の知識が、自分の身を守ることにもつながります。ぜひ、年金、医療、介護、雇用といった社会保障にも関心を持っていただければと思います」

取材・文/紀和 静

猪熊律子さん いのくま・りつこ 読売新聞東京本社編集委員。1985年読売新聞社入社。2014年社会保障部長、'17年編集委員。専門は社会保障。'98~'99年、フルブライト奨学生兼読売新聞社海外留学生としてアメリカに留学。共著に『ボクはやっと認知症のことがわかった』(KADOKAWA刊)など