そう振り返るのは、泉涌寺で寺務長を務める川村俊弘僧正。上皇ご夫妻からは、こんなお心遣いもあった。

「コロナ禍の影響で一時期は参拝者が8割ほど減ってしまいました。ようやく外国の方々が訪日するようになったのですが、おふたりからは“そういう兆しがあるから、頑張ってください”と労いのおことばをちょうだいしました」(川村僧正)

伝統文化の保存や継承をテーマにしたご旅行

 ある宮内庁OBは、上皇ご夫妻のご訪問による“宣伝効果”に期待を寄せる。

「皇室の方々がお出かけになると、その様子がテレビや新聞で取り上げられます。皇室と国民の交流が報じられるのは意義深いことですが、それだけでなく、ご訪問先の施設名が全国に広まり、その施設の人々に喜んでもらえるという“副産物”もあるのです」

 例えば、上皇ご夫妻が17日に訪問された、奈良県天理市の『なら歴史芸術文化村』は、同県が誇る文化に触れることを目的として昨年3月にオープンしたばかり。

「現存する薬師寺東塔の模型を観覧されました。この模型は前日にできあがったばかりだと知ったおふたりが、“新しい!”と顔を見合わせて笑顔をお見せになっていましたね」(前出・皇室担当記者)

京都駅付近の沿道には大勢の人が集まり、日本国旗を持って奉迎した
京都駅付近の沿道には大勢の人が集まり、日本国旗を持って奉迎した
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 コロナ禍が収束しつつある今、上皇ご夫妻は、さまざまな場所へお出かけになることによって、旅先の“広報活動”を担いたいというお気持ちもあったのかもしれない。

京都は、東京遷都までの1000年以上、天皇が住んだ地で、皇室にとって“父祖の地”といえます。退位後、初めての私的旅行先として、ふさわしい場所だとお考えになったのでしょう」

 そう語るのは、皇室解説者の山下晋司さん。

「在位中の私的旅行を振り返れば、自然の景色を楽しまれたり、災害の被災地や農家を訪問されたりということが多かったように思います。一方で今回は、伝統文化の保存や継承をテーマにしたご旅行でした」(山下さん)

 上皇ご夫妻が退位後の楽しみのひとつとされていたのが私的旅行だった。