わが家に来ると“自分の家はもっと大きい”とか言うので、変な人だと思いました。でも、娘はSに心酔していて“アメリカのディズニーで働いていたんだって”とか自慢するように話していました

 美月さんは上京し、アイドル活動をしながら予備校に通い、2017年に横浜国立大学に合格。5枚のDVDを出し、過去に人気タレントを輩出してきたオーディション『ミスiD』の2022年のファイナリストになった。

「殺されたも同然」

「2022年10月、娘が大好きな福山雅治さんゆかりの地をまわるため、2人で長崎旅行をしました。そのとき、娘がいきなり“霊が見える”って言い出して。娘がSに電話をしたら“塩をまけ”“全身にシャワーを浴びろ!”と指示をされていました

 母親が最後に娘に会ったのは、亡くなる2日前だった。

「急に会えることになったけど、どこか様子がおかしかった。会う直前までは、別の芸能プロダクションに移籍できるんだと喜んでいたのに、Sから多額の移籍金を払えと言われて、移籍を断念したと知りました。東京に戻るときに“また帰ってきてね”と言ったら“もう帰らない”と言っていて……。美月はSに殺されたも同然だと、私は思っています

 突然いなくなってしまった娘に、母親は今も納得できず、悲しみに暮れている。

 法律的にS氏の責任を問うことはできるのか。『法律事務所Z』の依田俊一弁護士に聞いた。

美月さんがS氏の営む事業の従業員といえるならば、未払い分の給料について訴えることはできます。時効は3年なので3年分が請求できます。仮に業務委託契約の場合でも商取引であるので、通常有償での契約合意があるとして、請求できる可能性があります」

 美月さんの死から約3か月後の6月18日、事務所は『見送る会』を開催。熱心なファンは香典を持参したが、母親はそれを受け取っていない。

片瀬美月さんの遺影を前に取材に応じた母親。手前は家族で作った思い出の手作り人形
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 S氏に話を聞くべく、携帯電話に連絡したが出ず。今も美月さんの写真とプロフィールを載せている事務所ホームページに連絡したが返信はなし。事務所の会社登記で代表になっている所属アイドル女性宛てにメールをすると「Sは現在、社長ではないが、仕事は手伝っているので、本人に伝えておく」との返信があって以降、音信は途絶えた。

 女性の夢につけ込み、最悪の事態を招いたことから目を背けてはならない。

【悩みを抱えている方は厚生労働省が紹介している相談窓口をご利用ください】いのちの電話 0570-783-556(ナビダイヤル)/0120-783-556(フリーダイヤル・無料) こころの健康相談統一ダイヤル 0570-064-556 #いのちSOS(特定非営利活動法人 自殺対策支援センターライフリンク)0120-061-338 よりそいホットライン(一般社団法人 社会的包摂サポートセンター)0120-279-338

依田俊一 慶應義塾大学卒、東京大学法科大学院修了。M&A、事業承継、芸能・広告案件に強みを持つ。現在は、法律事務所Zのパートナー弁護士/デジタルエンターテイメントコンソーシアムアドバイザー弁護士として活動