島育ちゆえの苦悩

 その理由は、彼女を生かせる役を業界がなかなか見つけられなかったこと、そして、長崎県福江島という離島出身のためか、芸能界に適応するのに時間がかかったことだろう。なにせ、博多まで船で9時間。中3で上京したのは、週1ペースで通うのに限界がきたからだという。デビューから8年たった'15年のインタビューでも、

「周りの環境が地元とは違いすぎて、いまだに若干戸惑うこともあります」

 と、告白。気の強い正直すぎる性格もある意味、島育ちの野性的なもので、それを自然体の飾らない魅力に見せることが当時はできなかった。

 ちなみに、前出『心はロンリー』シリーズで初代マドンナを務めたのは、田中美佐子。くしくも、島根県の隠岐諸島で生まれた離島出身女優だ。

 こちらも、事務所後輩の東貴博に「親分肌の人で、怖い」と言われるような性格で、大女優にいじめられた過去をテレビで暴露するなどしている。元・付き人、深沢邦之との格差婚(のち離婚)などを乗り越え、たくましく生き抜いてきた。川口もまた、格闘家と交際中にはその勝利を現場で見て号泣していたほどの激情家だ。公私共にたくましく生き抜いていくことだろう。

 それにしても、もし沢尻の事件がなかったら、川口の今は違うものになっていたのでは。歴史に「もし」はタブーとはいえ、ついそんなことも考えてしまう。

 もちろん、舞い込んだ運をものにできたのは実力のおかげだが、先輩女優の転落を機にのし上がるという展開には芸能モノのマンガみたいな妙味がある。正統派美人女優のブレイクには、これ以上ないエピソードだ。

ほうせん・かおる アイドル、二次元、流行歌、ダイエットなど、さまざまなジャンルをテーマに執筆。著書に『平成「一発屋」見聞録』(言視舎)、『平成の死 追悼は生きる糧』(KKベストセラーズ)。