出口の見えない暗中模索の捜索が続く
「警察の捜索は3日で打ち切られました。以後、家族の力で何とかしなければなりません。とはいえ、どうやって父を捜し出せばいいのか、術はまったくわからない。不安を覚えつつ、手探りで行動を起こすしかありませんでした」
市内各所や山に入っての捜索、SNSを使った情報発信、自治体の掲示板へのビラ張りなど奔走。目撃情報はいくつか寄せられながらも、発見には至らず。次第に、江東さんの心は揺れ動いていく。
「早く見つけてあげたいと願う反面、山に分け入っての捜索では見つかってほしくないのが本音でした。絶対どこかで生きていると強く信じているからです」
月日が経過していくにしたがい、高齢の母親と衝突する場面が何度もあった。
「捜索に一生懸命な私に対し、母は『私生活も大事にして』『どこかで区切りをつけてほしい』などと言うのが、納得できなかったんです。でも母のほうも待ち続ける日々を受け、『区切りをつけたくてもつけられない。このまま人生終わるのかなあ』とこぼしたりして……」
そんな中、市内で白骨化した遺体が発見されたという報が今年6月に警察から入る。服装などが失踪時の父親とほぼ一致し、鑑定を待つことに。
「結果は父ではありませんでした。そのことを母に報告したら、『お父さんだったら、みんなに忘れられないうちに見つかってよかったのかも』と。言葉から母のつらい思いを知り、涙が止まらなかったのを記憶しています。ただその涙は、父だったら供養してあげられたんだなあと一瞬でも考えた自分が許せないことへの涙でもあった。複雑な気持ちでした」