目次
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ー 頑張りへの成果が見られず心を病んでいく
Page 2
ー 親ではなく、仕事の「マネジメント」と考える
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ー 先が見えない不安に襲われる、介護うつに陥った実例!!

 肉体的にも精神的にもきつく、重い負担を伴う、親の介護。そのときはある日突然やってくる。すでに、その渦中という人もいるだろう。

「親の介護負担が原因で、うつ病を患うケースは少なくありません」

 こう語るのは、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さん。太田さんは老親介護の現場を数多く取材し、そこで得た情報を多方面で発信している。なぜ、親の介護で心に不調を来してしまうのか。そこには必然的な理由が潜む。

頑張りへの成果が見られず心を病んでいく

「介護って先が見えないんです。平均寿命が延び、介護期間は長く続きます。また介護の場合、仕事と違って頑張りに対する成果が望めません。むしろ親の身体は年齢とともに弱まっていくので、介護をしても状態が好転しないことに悩み、気持ちも落ち込んでいきます。さらに介護者の多くは孤独に陥りがち。これらの要因によって心が痛んでいきます」(太田さん、以下同)

 そんななかで追い打ちをかけるのが、親の介護に関する固定観念だ。

『育ててもらった恩返し』という言葉に縛られてしまう人が多くいます。親への恩返しのために介護するのが子の努めであると。『孝行のしたい時分に親はなし』という言葉も同様。子本人が思っているだけでなく、親戚などが口にするケースもあります。どちらにせよ、精神的に追い詰められて逃げ場がなくなるわけです」

 太田さんは、父親を介護する50代後半女性Mさんの例を挙げる。Mさんは社会保険労務士の資格を持ち、2人の子どもの子育てを終えてから都市部で開業。仕事に追われつつも、充実した毎日を送っていた。その矢先に地方に住む両親のうち母親が他界。父親は一人暮らしとなり、いつしか認知症を発症した。

「Mさんは都市部の事務所を閉め、地方の実家で父親を介護していました。会ってお話ししたときは、『(父親に対し)恩があるから……』と口にされ、涙をぼろぼろこぼし、気持ちの強い落ち込みが見られました。実際、心療内科に通院し、薬を服用しながらの介護生活でした」

 出口の見えない親の介護で身体も疲弊。そこに襲いかかる「恩返し」という思考が重責となり、メンタルが崩壊してしまう。回避するにはどうすればいいのか。

「子育てに置き換えてみてください。私自身も子育てを終えていますが、子どもに対して『恩を返せ』なんて発想は一切なく、むしろ『大きく育ってくれてありがとう』くらいの気持ちです。このように立場を入れ替えたら、親が“恩返しをしろ”と言っているわけではなく、自分の勝手な思い込みだと気づくのではないでしょうか