重くのしかかる住居費補助も不十分で……

老後おひとりさま女性に深刻さ増す困窮度(※画像はイメージです)
老後おひとりさま女性に深刻さ増す困窮度(※画像はイメージです)
【写真】年金で暮らす高齢夫婦の家系の赤字額

 加えて、中高年期の単身女性に対する就労支援が行き届いていないのも見逃せない問題とのこと。

「例えば『教育訓練支援給付金制度』。同制度は失業時の資格取得費用を一部サポートするものですが、45歳未満を対象としています。資格を取得して再就職や収入アップにつなげたくても、年齢ではじかれる中高年シングル女性は利用できないのが現実です」

 一方、支出面では住まいの問題がネックに。賃貸住宅で一人暮らしをする高齢単身女性が苦境に陥っている。

「賃貸の住居費が家計に重くのしかかるからです。住居費を下げたくても、高齢になると賃貸住宅を借りられないケースもあるので簡単には引っ越せません。また、賃料の安い公営住宅に入れればいいですが、厳しい要件などで狭き門になっています。結局、仕方なく高い賃料を払い続けている人が多いんです」

 以上のように、雇用不安から低収入を招き、低収入を起点に低貯蓄、低年金へ。そこに重い住居費の支出が追い打ちをかけるという老後貧困の姿が見て取れる。

「私たちが行った中高年シングル女性の生活状況実態調査でも、その構図は色濃く表れていました」

 大矢さんがそう話す調査とは2016年と2022年に実施したもの。直近は中高年単身女性約2300人を対象とし、回答を得ている。

 調査結果によると、正規雇用に就く人は全体の半数に満たない。非正規雇用約4割、自営1割強のうち、半数以上が年収200万円未満。低収入の中、住居費の支払いを6割以上が重荷としている。そして65歳以上の高齢者219人の年金月額は10万円未満が54%にのぼり、生活の苦しさから4割強の人が70歳を超えても働いている。

「回答者は皆さん、将来に不安を感じています。『病気や介護が必要になったらどうするか』『仕事を続け、十分な賃金を得られるか』『低年金・低貯蓄で高齢期に生活できるのか』と。また、おひとりさまの難題として、病院や介護施設に入るときに求められる『身元保証人』の確保を心配する人も少なくありません。子育て世代には手厚い支援をしながら、中高年シングル女性の不安は解消しようとしない。調査結果を通じ、私たちが社会や政治に無視され続けていると実感しました」

一人なのは自己責任そう自分を責めないで

 国は何もしていないわけではない。2024年4月、困難女性支援法を施行。貧困やDVなど困難な問題を抱える女性への支援に関する同法に基づき、全国の自治体に環境整備を働きかけている。

「中高年シングル女性が安心できる“居場所”が必要。でも実現にはまだ時間がかかるでしょう。国に対しては老後貧困対策として、最低賃金のアップと家賃補助の強化を第一に強く求めたいです」 

 中高年シングル女性に特化した支援がないと同時に、特化した相談窓口も見られない。現状では各市区町村が設ける女性専門の相談窓口などの利用をすすめる。

「まずは不安の内容を整理することです。例えば賃貸住宅に住み、失業などで家賃が払えなくなるのが不安なら、住居確保給付金という制度が使える。病気になって働けなくなるのが不安なら、社会保険に入っていれば傷病手当金という制度が使える。不安を具体化し、解決できる制度をリサーチして知っておくことで安心できるでしょう」

 困窮し、不安を抱える当事者女性に向け、自分の努力が足りないなどと自己責任の考えに陥らないで、と大矢さん。

「シングル女性を排除したり、生きづらくしたりしている社会保障、国の制度のほうに問題があるわけですから。同じ境遇の人たちとつながり、支え合い、生き抜いていきたいと思います」