月12万円の生活で老後の予習

キッチンには食用と観賞を兼ねてハーブや豆苗を常備。「お花がなくてもホッコリしますし、そこそこ満足です」
キッチンには食用と観賞を兼ねてハーブや豆苗を常備。「お花がなくてもホッコリしますし、そこそこ満足です」
【写真】「月の予算は12万円」内訳ときんのさんの“おひとりさま”ヒストリー

 団地の部屋を自分好みにフルリノベーションしたあと、重大な事実に直面する。

「リノベーションで貯蓄の大部分を使い果たし、老後の資金が足りないことに気づいて(笑)。それで総務省が出している高齢ひとり暮らし世帯の消費支出を参考に月の生活費を試算しました。団地に移って住居費が大幅に減り、月12万円もあれば慎ましくも自分らしい生活ができそうだと思えるように。そこで、老後に備えて月12万円で暮らしてみることにしたんです」

 その後、正社員で勤めていた会社を辞め、52歳で国家試験に合格し介護福祉士に転職している。

「会社員時代の通勤時間は往復3時間でしたが、今は自転車ですぐ。その時間を自分のために使えるのは、私にとって大きなメリットです。母の様子もすぐに見に行くことができますし、今の自分の生活に満足しています」

 予算の内訳を決め、上手にやりくりをしているが、3千円のプチ旅行や陶芸などの趣味のための「教養娯楽費」は多めに設定している。

「人生の後半戦、まだ楽しみたいし、興味のあることにチャレンジしたい。私は倹約家というわけではなくて、例えば、最新のiPhoneを使うために格安スマホから大手キャリアにかえたら通信費が高くなったこともあります。その分、やりくりで工夫すれば、達成感を得られる。貯蓄が目的ではなく、自分の人生を豊かにすることにお金をかけること。それが今の私の暮らしなんです」