7歳でやっとわかった正しい病名

 原因を探し続け、5歳のときには、筋肉に異常が起きる難病、先天性ミオパチーと診断された。

「でも、采音の症状は先天性ミオパチーの、どの病型にも当てはまらず。結局明確な原因はわからないまま時は過ぎ、7歳でようやくコケイン症候群とわかったんです。当時は悲しさよりも、やっと病名がわかったんやという気持ちや、もっと早くわかっていたら紫外線のケアやリハビリができたかもしれない、と強い後悔に襲われました」

右胸の管から栄養の点滴を入れ、腸の管から排液を外に出しており、常につながれている状態(写真は本人提供)
右胸の管から栄養の点滴を入れ、腸の管から排液を外に出しており、常につながれている状態(写真は本人提供)
【写真】24時間365日、チューブにつながれている采音さん

 以来、香織さんは定期通院と昼夜問わずの看病で、采音さんの命を支え続けてきた。

「コケイン症候群の子は食事がうまくとれないので、チューブで胃に直接栄養を流し込む、胃ろうを使うんですが、采音は体質的に胃ろうを受けつけず。今は胸から太い血管に直接栄養の点滴を入れて、下腹部にも腸の排液を外に出す管がつながっています」

 2本のチューブは、24時間365日、身体につながれている状態。その管理のため、香織さんは采音さんから目を離すことができない。

「管が邪魔で自分で抜こうとするんですが、もし引っ張れば大出血してしまうし、お腹の管も抜けやすいので見守りは必須。また采音は薬の注入もしづらく、1回4~5時間はかかるので深夜まで点滴することも。私の睡眠時間は1日、2~4時間ですね」

 しかも管の挿入部は感染を起こしやすく、敗血症で度々命の危機に晒されてきた。香織さんの苦労は他にもある。

「車椅子で電車やバスに乗ると嫌な顔や舌打ちをされることもあります。エレベーターがない駅で階段の昇降機を使っているときに、邪魔なんじゃ!と罵倒されたことも」

 睡眠不足と疲れが重なり、香織さんは重度の喘息を発症してしまう。

「まずは健康体になろうと、ダイエットで9kg痩せました。娘のためにも、私が元気でいなくちゃダメなので」