初めてのクラファンでディズニー旅行へ
数年前、SNSで知り合った知的障害の息子を持つママ友の紹介で、障害者を支援するNPO法人『VAROR』が主催する運動会に参加し、代表の辻和王さんに出会う。
「辻さんはいろいろなイベントを開催していて、采音もファッションショーや運動会に参加したんです。そのご縁で、関西ABCテレビで采音の特集も放映されて。また辻さんの協力で教会を借りて花嫁姿も撮影しました。結婚は難しいし、女の子の憧れである、ウエディングドレスを着させてあげたくて」
その後も、障害者のためのイベントに積極的に参加し、思い出をつくっていったが、ある日、采音さんは急に自分の目を指さして「目が見えない」と訴えてきたという。13歳のときのことだ。
「それからはファッションショーに参加しても泣いてばかりで。本人が楽しんでないなら意味がないなと。それなら、一番楽しんでくれることをしてあげたいと、東京ディズニーランドへの旅行がいいと思って。辻さん協力のもと、旅費を集めるべくクラファンに挑戦しました」
最終締切日までになんと150万円の支援が集まった。
「采音も本当に喜んでくれて。小さいときに連れていっていて、目が見えていたときの記憶があるからわかるんですよね。でも顔は関係のない方向を向いていたりして、うれしい反面、複雑な気持ちにもなりました」
支援金は旅費に加え、難病助成金では賄えない高額な医療品の購入費用、そして子どもホスピスへの寄付に使った。
「夢の実現に協力してくれた方々には本当に感謝しています。寄付者の名前がわからない形だったので、この場を借りて感謝を伝えたいです」
とにかく前向きで明るい香織さんだが、一度だけ泣いたことがあったそう。
「采音が歩けなくなった10歳のとき、お風呂場で少し泣いてしまって、ママ大丈夫?って頭をヨシヨシされて。この子の前で泣いたらあかんって思いました。それに采音がいなくなった後にいくらでも泣けるし、泣く時間があるなら1分1秒でも長く、采音が楽しめることを考えたほうがいいなって。
最初に検査をすすめてくれた先生に『目が見える間にいろんなものを見せて、耳が聞こえる間にいろんな音を聞かせてあげて、いろんな思い出をつくってあげてください』と言われたことがあって、確かにそうやなと。身体の機能が落ちて寝たきりになっても、その時楽しめることを探していきたいです」
取材・文/井上真規子