そして人間の場合は、オーストラリアで50歳以上の6000人のデータを分析したところ“人との交流が深まる性行為”が認知力低下を防ぐこともわかった。
「これはつまりひとりのパートナーを大切に愛し、性行為を繰り返すことが、脳に良い影響を与えるということ。性行為をすると人間の脳からは、ドーパミンやオキシトシンという脳内神経伝達物質が分泌され、やる気や幸福感といったポジティブな気持ちをもたらします。
研究によるとその効果は翌日まで続くこともわかっていて、性的な充足感が人生に与える影響は大きいといえます。自分が“できる”“したい”と思えば何歳になってもできることですし、定年はありません。性行為は人生100年時代における“大人の健康法”なのです」
更年期などの不調が性行為を遠ざける
だが一方で、女性が閉経するタイミングは平均50歳ごろだとされ、その前後5年の合計10年間ほどを更年期として過ごすことになる。卵巣の活動が止まり、女性ホルモンのエストロゲンの分泌量が激減することから、さまざまな症状が現れるのだ。
「循環器系ではホットフラッシュ、多汗、手足の冷え、むくみ、高血圧、高コレステロール血症などが挙げられます。皮膚・分泌系ではドライアイ、ドライマウスによる口臭、シミ、シワ、薄毛、白髪、そして腟や外陰部の乾燥も。
泌尿器・生殖系では尿漏れ、頻尿、子宮脱、腟の灼熱(しゃくねつ)感、ヒリヒリ痛い、かゆみ、においの悩みや性交痛があります。それに加えて、食欲不振など消化器系の不調、情緒不安定になるなど精神的な不調もあります。
さらには骨量、筋肉量も低下して足腰が弱くなっていく。どこをどうとっても、女性が自信を喪失しやすい時期なんです」
女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌量が激減することで、性行為においてもさまざまな変化が生じるのも事実。
「腟が濡れるまでに時間がかかる、愛液の量が減る、外陰部・クリトリス・胸などの性感帯の感度が落ちる、愛撫(あいぶ)されても集中できない、性欲が減退する、性的な関心がなくなるなどの変化があり、加齢による性交痛に悩む方も多いです。
特に中高年以降の女性に多いのが、萎縮性腟炎による性交痛です。腟の粘膜の潤いが減り、時に萎縮してしまうことで粘膜が摩擦に弱くなり、炎症が起きやすくなるのです」