病気も健康管理も前向きに好奇心で乗り越える

 幸い痛みなども日に日によくなり、約1週間で退院。入院中は家族以外の見舞いをほぼ断ったこともあり、「休暇をもらったように、かえってゆっくりと休めてよかった」とどこまでもポジティブに語る。そして退院後は、健康をより意識した生活を送るようになった。

「30年くらい前から歩数計をつけてよく歩くことを心がけていたんですが、入院したらやっぱり筋肉が落ちちゃって。使わないとどうしても弱くなっちゃうので、いまも毎日7000~1万歩は歩くようにしています」

肺腺がんの疑いを告知されてから出発した皆既日食を見るためのメキシコ旅行(本人提供)
肺腺がんの疑いを告知されてから出発した皆既日食を見るためのメキシコ旅行(本人提供)
【写真】左わき腹に残る手術痕と、手術で摘出した肺

 2年ほど前から始めたサウナも有効だと実感している。

「60代や70代の人だとサウナの水風呂って怖くて入れない人も多いと思います。僕もそれまで一度も入れなかった。でも、流行っていると知って好奇心で試してみようって。

 お医者さんの書いた本のルールどおりにやってみたら、身体にいいっていうことをだんだん実感してきたんです。特に手術をしてからはリハビリの一環として自分なりに気をつけながら入っているんですが、血圧も下がって呼吸も長くなったんですよ」

 サウナでは必ず自分の身体と対話をしながら、きちんと脈拍も測るなど、無理をせずに楽しむのが自分流と話す。

 食事ではタンパク質を意識するようになったそう。

「タンパク質は重要だけど年を取ると不足するからと、人にすすめられて毎朝プロテインを飲むようになりました。肉でもいいんですが、プロテインのほうが簡単なので。手間をかけずに健康になりたいと考えるタイプです」

 過去にはお酒にまつわる武勇伝もたくさんあったというが、10年ほど前から量を控え、めったに飲まなくなった。

「2035年9月2日に北関東で皆既日食が見られるんですよ。その日を健康で迎えたいと思ったのが始まりです。85歳まで健康に生きるためにはどうしたらいいかを、60代半ばごろから考えて過ごしています」

 生活習慣病の検査を半年に一度のペースで受けているのもその一つだ。ちなみに、長年の嗜好や習慣まで変えさせてしまう“皆既日食”の魅力を聞いてみると─。

「それまで青空だったのが、(太陽と月が重なって)ダイヤモンドリングがバーンと現れた瞬間、一気に真っ暗になって空に星が瞬くんです。風が吹いて一瞬にして気温も下がって、鳥や虫が鳴きだし……。映像で見るのと体験するのとでは、ぜんぜん違って人生観も変わるほどです」