年頃の娘たちには、ヨシさんとの交際を7年半も隠していたが、三女が大学生になったのを機に告白すると、みんな大歓迎してくれたという。しかしその後、あゆみさんのがんが見つかったのだ。発見のきっかけは不正出血だった。
ステージ1Aの子宮体がんと判明
「当時53歳で不定期に生理があったのですが、1か月近く、毎日だらだらと出血が続いて。これは何か変だと」

婦人科で子宮体がん検査を行うと、判定は疑陽性。内膜を取って詳しく調べたところ、ステージ1Aの子宮体がんと判明した。
子宮体がんは50~60代の患者数が最も多い病気だが、国が定めるがん検診の対象外で、自主的に検査に行く必要がある。
「同世代の女性は不正出血がなくても、一度は子宮体がん検査を受けてほしい」とあゆみさんは強調する。持病もなく健康には人一倍気をつけていたので、告知されたときは“どうして私が、がんに?”と信じられなかったという。
「私の母が大腸がんを患っていたのですが、医師からはそれも子宮体がんのリスク因子だと言われました。初期段階で見つかったのはラッキーで、卵巣と子宮を全摘出すれば治ると言われ、手術を決意しました」
ヨシさんにがんを伝えると「代わってあげたい」と悲しみ、改めて彼の優しさを実感したそう。
手術は腹腔鏡下で行われ、子宮筋腫の摘出もあり10時間に及んだ。長時間麻酔を使った後遺症か、その後2年近く肩の痛みに悩まされるなど身体への負担は大きかった。
しかし術後1年たった2023年4月、定期のCT検査で腹部に小さな影が見つかる。
「7月に再検査に来るように言われましたが、当時は父の看取りと葬儀で忙しくて行けませんでした。8月、夜中に腹部の激痛に襲われ、救急車で病院に行くと尿管結石だとわかって。搬送先がちょうどかかりつけの病院で、その場でCTを撮ったら、お腹の影が大きくなっているので、すぐ主治医に診てもらってくださいと」
尿管結石がおさまって9月にPET検査を行ったところ、腹膜の4か所にがんが見つかり、腹膜播種と診断。
手術や放射線治療ができないステージ4で、残された方法は延命のための抗がん剤治療のみ。治療しなければ余命は1年と宣告されるが、あゆみさんは気丈だった。
「根拠はないけれど、私はがんでは死なないという確信があったんです。なってしまったものは仕方ない、抗がん剤をやるかやらないかだと腹をくくりました」