こまめな水分補給を習慣化する
ではどのような対策が必要なのか。
環境省が作成した「熱中症環境保健マニュアル2020」には、1日に食事以外で1200mlの飲料の摂取が必要と定められている。これは150mlのコップ8杯に相当するので多い気がするが、水分摂取を生活のルーティンにすることが大切と安藤先生は語る。
「口が渇く前に、こまめに水分摂取をするのが原則です。就寝中は水分が失われやすいので、朝起きてすぐに1杯飲みましょう。運動中や運動後はもちろん、入浴でも水分を消費するので、入浴前後に積極的にとってください。そして寝る前にもしっかり補給しましょう。
人は体内の水分が5%減るだけで、ふらつきや倦怠(けんたい)感が現れます。体重による個人差はありますが、これを水分量に換算すると、約200~300ml。たったそれだけの水分不足でも、身体に及ぼす影響はとても大きいのです」
そして一気飲みをしないことも重要。胃に負担がかかり吸収も悪くなるので、ちびちび飲みが必須。
夏場は飲み物を凍らせて持ち歩いたり、運動時に冷たいドリンクを飲んだりするが、これは胃腸の血管をギュッと締めてしまい、その後吐き気を催すこともあるのでよくないという。飲み物は、夏でも常温が身体には優しい。

身近な飲み物なら、ミネラル豊富な麦茶がおすすめだ。ノンカフェインなので、カフェインの過剰摂取による動悸や吐き気の心配もない。
「ただし、厚生労働省の熱中症対策ガイドラインでは、飲料100mlあたりのナトリウム濃度として40~80mg(食塩相当量で0.1~0.2g)を推奨しているので、塩分が足りません。麦茶を1L飲むごとに塩分2g相当の梅干し1個を一緒にとったり、塩あめをなめるのが最適です」
最近では水を飲むという意識自体は高まっているが、体内のミネラルバランス、特に塩分不足で不調をきたす方が多いです。これは水中毒といわれる状態で、水のみを過剰に摂取したことで血中のナトリウム濃度が急激に下がり、吐き気や嘔吐などの症状が現れてしまう。
ただ、スポーツドリンクなどは避けたほうがベター。
「スポーツドリンクは運動後の水分補給のためのもので、糖質もミネラルも多すぎます。カリウムも多く含み、高齢者の腎臓に負担をかけるので、日常的に飲むことはおすすめしていません」