では、自律神経の乱れから来る不調に陥らないようにするにはどうすればいいのか。その方法はいたって簡単。
0.75倍速行動で自律神経のバランスが整いやすくなる
「倍速行動の逆、日常の行動スピードを意識的にゆっくりにすることです」
ゆっくりの目安は「0.75倍速」。基本の1倍速よりやや遅く、ゆっくりめ。けれど、0.5倍速のようなスローモーションほどではない、程よいスピードのこと。
「つい忙しなく行いがちな、毎朝のメイクや料理の下ごしらえ、入浴など。家族とのちょっとした会話やSNSを含めたコミュニケーションも、ひと呼吸つきながら何かに追われることなく行うイメージです。こうした0.75倍速行動を取り入れることで、だんだんと自律神経のバランスが整いやすくなります」
例えば休日にのんびり散歩をすると、いつもと同じ景色にもかかわらず、今まで意識していなかったお店が目に入ったり、公園の植物を見て季節の移り変わりを感じたりするもの。行動スピードを落とすと新たな気づきも得やすくなる。
「タイパを意識して倍速行動ばかりしていると、人生が味気ないものになっていきます。ゆっくりした行動に切り替えれば、新たな発見の毎日となり、健やかで心豊かな生活が送れるのです」
工藤先生が推奨する0.75倍速行動のひとつは動画視聴。近年、SNSやドラマの動画を1.5倍速や2倍速で視聴する人が増加中だが、そこには思わぬ落とし穴が。
「最新の研究によれば、同じ動画を見た場合でも、通常再生時より倍速再生時のほうが交感神経の働きを過剰にして、自律神経のバランスを崩すことがわかっています。ドラマなどの映像は倍速にせず、ストレッチやヨガといった動画は、ややスローな再生速度でゆったり見るのがおすすめです」
スローテンポの音楽を聴くことも、自律神経のバランスを整えるのに効果的。
「運動会の定番曲『天国と地獄』という曲を聴くと、テキパキと動かなければいけないような気持ちになりませんか? 反対に落ち着いたクラシックを聴くと、ゆったりした気分になる人が多いはず。このように音楽のテンポは心身に影響を与えることがわかっており、速いテンポの曲は交感神経を優位にし、遅いテンポの曲は副交感神経を優位にする傾向があります」
身体を動かすことや、呼吸を意識的にコントロールすることも重要なポイントに。
「自律神経を整えるには、身体からのアプローチも大切です。例えば、ストレッチやラジオ体操を行ったり、駅や買い物に出かけたりしたときに、あえて階段を使うのもいいでしょう。また、鼻から息を吸って口から吐き出す腹式呼吸をすることでも、自律神経は整います」