心身をアクティブに動かす交感神経が優位になるまでの時間はわずか0.2秒程度。対して、心身を休ませる副交感神経が優位になるには約5分もかかるという。
「人間の身体の仕組み上からも、戦闘モードの交感神経が優位になりやすい。ですから、副交感神経優位くらいがちょうどよく、その状態に導く0.75倍速行動が有効といえるのです」
日常に生活に「0.75倍速」を取り入れる方法
一方、加齢によるホルモンバランスの変化も、自律神経の乱れに結びつく。
「特に更年期以降の女性はホルモンバランスの変化が激しく、連動して自律神経も乱れやすくなります。倍速行動のイライラを強く感じ、更年期症状と相まって精神的にも肉体的にも追い込まれやすい」
倍速行動にはイライラなどの症状だけでなく、集中力が低下して判断ミスや物忘れなどの症状が現れる「脳疲労」をもたらす危険性がある。
「というのも、自律神経をコントロールしているのは脳。倍速行動が続くと、その調整を担っている脳にまで負担がかかり、うっかりミスや物忘れなど脳の疲れが現れやすくなるからです。脳疲労が進むと、生活習慣病やうつ病のリスクも高まります」
大敵の倍速行動。のんびりを意識した生活を今日から始めてほしい。
「あえてタイパの悪い行動をすることで自律神経のバランスが整い、心身の不調に悩まされずにすむ。一見ムダだと思う行為に価値があるともいえます。不眠や頭痛など原因不明の体調不良が続いている人は、0.75倍速行動を実践してみてくださいね」
日常に「0.75倍速」を取り入れて心も身体もゆったり整え
1・スロー再生でストレッチ動画を見て身体を動かす
YouTubeなどでストレッチやヨガの動画を、1倍速よりややスローな0.75倍速に設定し、のんびり身体を動かす。呼吸が自然とスローペースになることで心身を休める副交感神経が優位に働き、心も身体もリフレッシュ。
2・のんびり遅めの音楽を聴いて散歩する
遅いテンポの曲を聴くと自然と副交感神経が優位になるため、のんびり散歩と組み合わせて実践。「私は『スタジオジブリの歌 オルゴール』を散歩中などに聴いて、心身をリラックスさせています」(工藤先生)
3・「4・7・8」呼吸法で自律神経をリセット

緊張ぎみのときや倍速行動をとっているときは、無意識に呼吸も速くなりがち。なので、意識的にゆったりと時間をかけて行う、腹式呼吸をするのがいい。工藤先生のおすすめは「4・7・8呼吸法」。4秒鼻から息を吸った後に、7秒止め、8秒かけて口から息を吐き切るのを4サイクル繰り返すことで、心身の緊張をやわらげる。
取材・文/百瀬康司
工藤孝文先生 そのだ内科 糖尿病・甲状腺クリニック副院長。専門は糖尿病、自律神経、心身の不調、漢方医療など多岐にわたる。著書・監修書は100冊以上。近著に『0.75倍速健康法』(フォレスト出版)。