早期発見につながるチェックリストとして、田中さんが医師や研究者らと共同開発した、4つの質問からなる“LOST”診断がある。下の質問項目のうち2つ以上あてはまると、ギャンブル依存症になっている可能性が高い。

最初にすべきことは専門機関への相談

LOSTは当事者向けなので、家族が気づくにはもっとシンプルな判断基準があります。それは“ギャンブルのために借金を繰り返しているか”。誰だって借金なんかしたくないのに、その苦しみを繰り返してしまう。そうなるともはや、自分の意志ではコントロールできない状態、依存症に陥っていると考えたほうがいいでしょう

 家族がギャンブル依存症かもしれない─。そう思ったとき、何をすればいいのだろうか。

最初にすべきことは、専門機関への相談です。本人に病気の自覚がないなら、家族だけでも相談に行ってください。相談先としてはギャンブル依存症の当事者や家族をサポートする民間団体(自助グループ)、地域にある精神保健福祉センター・保健所、医療拠点病院などが挙げられます。おすすめはギャンブル依存症に詳しい民間団体です

 一方で、家族が絶対にやってはいけないこともある。

それは、ギャンブルでつくった借金の肩代わりをしてしまうことです。助けたつもりがまたギャンブルをする機会をつくり、本人の病気を悪化させるだけです

 家族が返済の肩代わりなどをしない「兵糧攻め」をすれば、やがて本人はどこからもお金を借りられなくなり、返済もできなくなって周囲からの信用を失っていく。

見守るほうもつらいでしょうが、本人が困難に直面する“底つき体験”をすることが、専門機関につながるきっかけとなり、結果的に回復が早まります

 ギャンブル依存症は、うつ病などと違って有効な薬というものはない。多くの場合は、本人と家族が自助グループに通いながら、回復プログラムに取り組むようすすめられる。

 回復プログラムでは、自分が依存症であることを認める、これまでの生き方や生活を徹底的に振り返る、といったプロセスを経て、ギャンブルに頼らない生き方を見つけていく。

ただし、ギャンブル依存症から回復しても、アルコール依存症と同じく『完治はしない』と考えてください。20年間ギャンブルをやめられても、再びギャンブルをすれば瞬時に依存症状態に戻る可能性があります