感染症と隣り合わせの日々
しかし、このままでは2人ともつぶれてしまう。陽平さんは現実を受け入れようと覚悟を決め、患者会に連絡を取り、息子のために何かできることはないかと動き始める。その姿に救われた、と結衣さん。
「夫は早い段階で物事を受け止め、どうやって前に進んでいくか考え、行動してくれた。息子のことを可愛い可愛いと言ってくれました。もし2人ともあのまま落ち込んでいたら、きっと今にはつながっていなかったと思います」
出産から3か月後、賀久くんの退院許可が下りる。日常生活は苦労が多く、病気との本当の闘いの始まりだった。
道化師様魚鱗癬は皮膚のバリア機能が失われているため感染症にかかりやすく、常に清潔に保つ必要がある。感染症の中でも特に危険なのが、黄色ブドウ球菌感染症である。
「身体の中に入ると血液を通って心臓に菌を運んでしまい、生死に関わることもあります。実際に2歳で感染したときは、2か月入院しました。点滴での治療でしたが、身体への負担が大きく、のたうち回るほどでした」
と結衣さん。朝晩の入浴に、乾燥も禁物だ。ワセリンは手放せず、1日で100g入りチューブを1本使うこともあるという。家事の負担も大きい。ワセリンで服がべたつくため、3種類の洗剤を使い、大人の衣類とは別に洗い上げる。いくら保湿しても絶え間なく皮膚が剥がれ落ち、掃除機をかけてもまた床にたまり─、の繰り返しが続く。
体温調節は難しく、日差しは大敵。この猛暑では外出も厳しく、3分で限界がきてしまう。さらに皮膚に栄養をとられ、食べてもなかなか体重が増えないのも悩みの一つ。幼いころは1日6〜10食、今では成人女性以上の量をとるようになったというが。
「それでも痩せていますね。結構食べているはずなんだけど……」と陽平さん。