偏見をなくすための覚悟
SNSにつきものなのが誹謗中傷である。賀久くんもターゲットにされ、心ないコメントの投稿が続いた。対処には時間も労力も資金も必要で、多くは泣き寝入りに終わるが、2人は毅然と立ち向かう。
両親の相談により警察が動き、40代の男が逮捕・起訴、執行猶予付き有罪判決が下された。だがそれでは終わらず、現在4件目の訴訟が進行中、と陽平さん。
「メディアに出るのは、差別や偏見をなくしたいから。ただ息子を前に出すことで起きたリスクへの責任という意味で、親としてきちんと対処していかなければいけないと思っています」
今年5月、「道化師様魚鱗癬」から「表皮分化疾患」に病名が変更になると発表された。侮蔑的な表現を改めるとの意向だが、
「働きかけてくれた方々には感謝しています。ただ名前が変わっても日常は何も変わらず、むしろまた新しく一から病名の認知を目指すことになる。複雑な気持ちです」
と陽平さんは言う。
賀久くんは現在小学校3年生で、この先、中学、高校と進学し、やがて社会に巣立つときが来る。病気は見た目のインパクトが大きく、闘いは生涯続く。親として、これからの未来に望むものとは?
「みんながみんなを尊重し合う、受け入れる世の中になるのが理想。みなさんに優しく受け入れてもらっているように、息子自身もみんなに優しくあってほしい。みんなが支え合っていける世の中に」
と陽平さん。結衣さんも気持ちは同じと話す。
「息子のために今私たちができることは何か。一つひとつ小さなことをするくらいしかできないけれど、一番は生きやすい世の中であってほしい。そう願うばかりです」
賀久くん 国内でも30万人に1人といわれる希少疾患「表皮分化疾患(旧・道化師様魚鱗癬)」と闘う小学3年生。YouTubeドキュメンタリー『ピエロと呼ばれた息子』でその明るい笑顔と前向きな姿が広く知られ、累計再生数は約1.8億回超。
取材・文/小野寺悦子