沖縄に来て以来、ミロとハルオはひっそりと暮らしていた。しかし、ミロと敵対していた人たちは、20年間諦めてはいなかった。盲目の久恵、同性愛者の友部、在日台湾人の鄭などがミロを捜し出そうとする。
女性は孤独で、自由に生きるのが一番いい
「彼らは『ダーク』で、ミロという人物をつくっていった人間なので、登場せざるを得なかったんです」
ミロを守るために殺人を犯し、刑務所に入ったジンホも、魅力的な男として再登場する。ハルオは、ミロと共に宿敵から逃げながら出自を知り、失意のどん底に落ちる。そして、あえて自分のルーツにつながる悪の中に飛び込んでいく。
シリーズの一貫したテーマは、ひとりで生きる女性。
「男の人と暮らしていても、最後はひとり。私の母もそうだし、寡婦になった友人もいます。女性は孤独で、自由に生きるのが一番いい。ひとりの女性として生きていく覚悟を持ちたい」
愛するジンホと息子の間で揺れていたミロはどんな結論を出すのか。ハルオはどんな闘いをし、ミロは息子を救うことができるのか。
手に汗握る展開に、驚きのラスト。『ダークネス』で繰り広げられる桐野ワールドに、最後まで目が離せない。
「バレエを習っています。といっても“美容バレエ”という体操みたいなもの。娘が子どものときのバレエ教室に付き添ったのが始まりで、もう30年以上続いています。週に3日。忙しいと週1になることもあります。そこで友達になった方と普通におしゃべりするのが楽しい。そういうこと考えているんだと、話を聞いています」
取材・文/藤栩典子
桐野夏生(きりの・なつお) 1951年生まれ。1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞。1998年『OUT』で日本推理作家協会賞。1999年『柔らかな頬』で直木賞。2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞。2010年『ナニカアル』で島清賞、読売文学賞。2023年『燕は戻ってこない』で毎日芸術賞、吉川英治文学賞。2015年には紫綬褒章を受章。日本ペンクラブ第18代会長を務める。