この選別基準には多くの疑問がある。まず、1日の乗降客数が約34万人(2022年)にのぼる大阪の玄関口・大阪駅周辺が入っていない。また、「タバコのポイ捨てが全国の繁華街で最も多い」と民間調査で判明しているなんば駅周辺(ミナミ)といった、誰もが必要性を感じるであろう場所が含まれていなかったからだ。
前編で紹介した飲食組合の調査結果によれば、大阪ミナミの繁華街ではポイ捨てごみの数が突出して多いことが明らかになっている。街の美化とマナー向上を目的とするならば、最も問題が深刻なエリアを最優先で対策するのが道理だろう。
「あるけど足りていない」という発想の欠如と、数字の矛盾
では、なぜ大阪駅やなんば駅周辺が外されたのか。その理由は、前述の選定基準にある。
週刊女性PRIMEの取材に対し、大阪市は次のように回答している。
「15箇所の選定エリアについては、63エリアの中でも、『周辺に誰でも無償で利用できる喫煙所が確保できていないエリア』のうち、特に人流、路上喫煙やポイ捨ての状況を勘案し、『特に対策の優先度が高いエリア』として選定し、令和7年度内での喫煙所の早期確保を図ることとしたものです」
つまり、なんば駅周辺(ミナミ)には、たとえ数が圧倒的に不足していたとしても、既存の指定喫煙所が”すでに存在する”ため、「周辺に喫煙所が確保できていない」という最優先の条件に当てはまらず、今回の15エリアからは除外されたのだ。一方、同じく選定から漏れた大阪駅周辺は、市の資料では喫煙所が「無」とされているものの、人流やポイ捨ての状況など、他の要件が基準を満たさなかったため、15エリアから外れたと見られる。

9月25日の大阪市議会でも、この点は厳しく追及された。ある議員が「なんばエリアがなぜ選定されていないのか」と質問したのに対し、市の担当者は「なんばエリアにおきましては、エリア内に指定喫煙所が存在するため、特に対策の優先度が高いエリアの15エリアとしては選定しておりません」と答弁している。
これは、市民感覚からすれば本末転倒と言わざるを得ない。問題の深刻さは「喫煙所があるかないか」ではなく、「需要に対して供給が追いついているか」で判断されるべきだろう。
市の算定ロジックには、さらに矛盾が潜んでいる。
市は、人流データと市の喫煙率から「推定喫煙者数」を割り出し、1日平均2,300人を超えるエリアを抽出基準の一つとしている。ここで重要となるのが、大阪市が当初の喫煙所整備の目標を140か所と設定し(前編参照)、現時点では市内の誰でも利用できる喫煙所が約395か所(市設置・民間含む)に達しているという事実だ。ただし、この395か所という数字も、約4割の140か所がパチンコ店内の喫煙所であり、既に「利用しずらい」という声がさんざん上がっている。