ルーズソックスや安室奈美恵、PUFFYの『アジアの純真』、矢沢あいの『ご近所物語』。久乃と綸の中学時代の風景には、綿矢さんが学生時代に見聞きしたものが溶け込んでいる。
「周囲からは浮いていました(笑)」
「中学生のころ、まわりにはアムロちゃんファンの子がいっぱいいました。そんな中、私はスピッツが好きでよく聴いていて。ルーズソックスもすごく流行っていて、持ってはいたものの学校でははけませんでした。ルーズソックスをはくようになったのは高校生になってからです。私服の高校に制服っぽく見える服装で通っていたので、周囲からは浮いていました(笑)」
ちなみに綿矢さん、中学時代は演劇部員だったそう。
「部員が少なかったので、自分たちで脚本を用意して、小道具なども作って演じていました。中高生向けの演劇脚本の中から、高校生の主人公が宝くじに当たって使い道を考える話や、おもちゃを擬人化した話を選んで上演していました」
新しい環境への期待と不安や思春期の淡い恋心、校外学習での非日常感など、本作は主人公の久乃の経験を通して10代のころの感覚が呼び起こされる作品でもある。
「ページ数が多く厚みのある本ですが、思ったほど時間がかからずに読めるのではないかと思います。気軽に手に取っていただいて、当時の空気感を思い出しつつ読んでいただけたらうれしいです」
最近の綿矢さん
「小説家で着物デザイナーの宇野千代先生が好きで、宇野先生デザインの着物を集めています。今は新しく作られていないので、中古で手に入れることが多いです。新中古の反物を買って仕立ててもらうこともあります。来年秋の朝ドラの主人公は宇野先生がモデルだそうなので、この機会に着物や帯の復刻版が出るといいなぁと思ってます」
『激しく煌めく 短い命』
綿矢りさ 文藝春秋 税込み2585円
取材・文/熊谷あづさ












