47歳で叶えた映画監督になる夢
40歳で出した『大人のための勉強法』(PHP新書)が広く読まれ、「大人こそ学び直すべき」と共感を集め、人生が再始動した。女性誌での連載をきっかけに、取材名目でワインを飲む機会が増え、次第にハマっていったという。
人の縁もワインを通じて広がった。
和田さん主催のワイン会には、パトリック・ハーランさん、鎧塚俊彦さん、吉田尚正さん(宮内庁皇嗣職大夫)ら多彩な顔ぶれが集まる。そのメンバーの一人、元「風」のミュージシャン・伊勢正三さん(73)は、和田さんの経歴を聞いて、「最初はとっつきにくい人かと思っていた」と語るが、気配りの良さと正直な人柄に触れ、印象が一変したという。そして、共感したのは“マリアージュ”的哲学。
「高級ワインはキャビアやトリュフと合わせるものと決めつけてる人が多いけど、和田さんは王将の餃子とこれが合うとか(笑)。見栄を張らず実を取る、その感じがすごくいいんですよ」
47歳でワイン仲間の支援を受け、念願の映画製作に踏み出した。初監督作『受験のシンデレラ』では、余命宣告を受けた予備校講師が貧困家庭の女子高生を東大合格へ導く姿を描いた。
作品はモナコ国際映画祭でグランプリを受賞したが、「受験がテーマだし、ヒットすると思ったら、大コケして」と興行面では苦戦した。
続く『「わたし」の人生』では、認知症の父を介護するためにキャリアを手放す女性教授を主人公に。
「保育園ばかりが話題になるけど、介護施設が足りなくて困っている人たちがいる。50、60代の女性たちがもう活躍しなくていいと世間から扱われているような現実を描きたかった」
その後も性被害など社会課題を軸に映画を撮り続ける。
「映画は“ライフワーク”だと思ってるからさ。資金さえあればもっと撮りたい。映画館はシニアで満席なのに、作品は若者向けばかりなのはおかしい。シニアに喜ばれる映画を作りたいんですよ」
近年は政党「幸齢党」の活動にも力を注ぐ。'25年6月に設立し、参院選では医療ジャーナリストの吉沢恵理氏を推薦。議席獲得には至らなかったが、年齢差別禁止法の制定やAI介護ロボット導入など独自の政策で注目を集めた。政党設立には約4500万円を投じたという。
「なんとかして日本の医療を変えたいし、高齢者には少しでも幸せになってほしいと思ってるんですよ。映画も政党も1人ではできないことだし、お金もかかる。でも、そういうことをうまく進めていきたいと思うんですよね」
その情熱と行動力に対して、周囲の反応はさまざまだ。前出の大石静さんは、映画製作について「着想は素晴らしいけど、監督術に痺れたことは、まだないです」と飾らず話す。
「幸齢党」設立時も、散財するばかりだと、灘や東大時代の友人たちは、みな心配して心から反対していた。
「選挙運動も不器用な感じでしたよね。あんなに頭がいいのに不思議です。きっと、みんなが自分と同じように理解できると思ってしまって、うまく伝わらないのかもしれません。医師としての腕も確かでいい先生なのに、映画も撮りたい、世の中も変えたいという思いを抑えきれない、むちゃくちゃな人なんですよ」












