寄り添ってくれた妻のおかげで今がある
ヨシダソースはこれまでに4度も経営危機に陥っている。どんなときもそばにいたのが妻のリンダさんだった。
「事業の資金繰りがうまくいかなくなって、やけ酒をあおって会社にある酒という酒を全部飲み、それでも飲み足りなくてみりんまで飲んで悪酔いして(苦笑)。酔っ払って家に帰った僕を、リンダは『家を売って安いアパートに引っ越しましょ』と励まして、ウイスキーのボトルを差し出してくれた。
何度会社が傾きそうになってもケロッとしていて、何も言わずにそばにいてくれた。あれほど心強いサポートはなかった。リンダは本当に自分にとってエネルギーであり、本当に天使でもあった」
崖っぷちから何度も這い上がってきた吉田さんだが、一度だけピストルを手に自死を覚悟したことがあるという。
「ピストルをこめかみに当てるうちに、『なんでわしが死ななあかんねん!』、アホらしーなってしらけてしまってね。自死をしそうになったことはリンダには黙ってたけど、ずっと後になって僕の本をきっかけに知ったみたいで、『あんた、バカじゃないの?』と呆れられてん(笑)」
吉田さんはほかにも、リンダさんにドン引きされたエピソードがあるそうだ。
「オレゴン州の知事が空手道場の生徒だった縁で州の最高経済顧問をしていて、一緒にパナソニックとか島津製作所とか京セラに視察に行ったことがあってね。どの会社にも創業時の白黒写真が飾ってあるのを見て、“この人たちは、創業当時から将来成功すると信じて写真を撮るだけの余裕があったんやなぁ”と思ってね。
うちの会社は僕が瓶にソースを詰めて、リンダが手作業でラベルを貼って、毎日ソース作りに追われてたから、当時の写真があらへんねん。だからあるとき、リンダに『白黒で昔のフェイク写真を撮ろう』って提案したら、『アホか!』と怒られました。『そんなに頭がハゲてるのに、今さら何言ってんの、すぐバレる』って(笑)」
吉田さんが話すエピソードからは、明るく働き者で地に足がついた暮らしを送る妻の姿が浮かび上がる。
「リンダは宝石が好きで、アクセサリーをいっぱい持ってる。でも、ほとんどがニセ物やねん。『ニセ物ばっかりじゃなくて本物も買ったら?』ってすすめたら、彼女は『ハニー、私がつければみんな本物になるのよ』って言った。リンダがこういう人だったおかげで、ブランド品も一切なしで、僕はここまで来れたんです」
愛妻家の吉田さんに夫婦円満の秘訣を教えてもらった。
「僕とリンダはコーヒーを手渡すときでも、お互いに『ありがとう』って言うねん。電話を切る前には『アイラブユー』やし、寝る前にも『アイラブユー』。結婚してるから愛してるのは当たり前だと思ってても、言葉にしてなんぼやねん」
愛情あふれる家庭での吉田さんの様子を、後継者の19歳になる孫のキアナン・ヨシダさんに教えてもらった。
「祖父は料理を作るのが好きで、家族みんなが祖父の家に集まると手料理を振る舞ってくれるんです。一番好きな料理はお好み焼きで、みんなで食べるひとときがすごく楽しいんです」







