人との出会いが健康の秘訣

ファミリーマートとのコラボ商品には吉田さんの顔がプリントされている(撮影/近藤陽介)
ファミリーマートとのコラボ商品には吉田さんの顔がプリントされている(撮影/近藤陽介)
【写真】今もラブラブな吉田夫妻、妻・リンダさんとの仲睦まじいツーショット

 会社の後継者がいないこともあり、吉田さんは2000年に「ヨシダソース」の米国内の販売権をライバルのハインツ社に売却した(国外での販売権は保持)。だが、2024年に販売権を買い戻している。その理由は、孫のキアナンさんが後継者に名乗りを上げたからだ。

「孫に『将来、ヨシダグループに入ってもいいですか?』と言われ、その日の午後に元副社長でもある顧問弁護士に販売権を買い戻すようにと連絡したんです」

 実はハインツ社に販売権を売却してから、「ヨシダソース」は販売網も販売数も70%縮小していたという。

「コストコにもウォールマートにも置かれなくなってブランド価値が落ち、二束三文の状態やった。アメリカでは食品のブランドがつぶれたら、それを立て直すのに30倍の資金が必要なんです。それでも買い戻し、コストコの元最高副社長のジョン・マッケインに連絡したら、一瞬にしてアメリカのコストコ全店での販売が決まりました」

 その後、友人の働きでウォールマートへの販路も戻り、現在は以前の売り上げに戻りつつあるそうだ。

「彼らとは若いころから仕事を通して付き合いがあるから、僕は信用されてんねん。だから困ったときに助けてもらえている。自分ではどうしようもならなくなったとき、力になってくれる人間がどれだけいるかで、人生は開けていくんや、人生まさにブーメランでっせ!」

 吉田さんの後継者となるキアナンさんは、現在、南カリフォルニア大学(USC)で行動経済学を学んでいる。

「祖父は一代で今の会社を築きました。僕は子どものころから祖父の仕事ぶりを見ていましたし、祖父が築いてきたものを引き継ぎ、この先も伝えていきたいです」

 現在、日本語を勉強中で、来春には東京都内の大学に留学予定だというキアナンさん。好きな日本語は、ヨシダグループのモットーでもある「OMOIYARI(思いやり)」だそう。

「ビジネスでも普段の生活でも、“思いやり”が何よりも大切だということを祖父から教わってきました。祖父から学びたいことは、まだまだたくさんあります」

 キアナンさんという後継者ができた今、この先の展望はどのようなものなのか。

「『ヨシダソース』はかけるだけでもおいしいし、煮込んでもおいしい。肉料理にも魚料理にも使えるから、料理のバリエーションが多い日本でもっと広めていきたい。孫のためにも経営の足元をしっかり固めてあげたいんです」

 吉田さん個人としては、次のような夢があると語ってくれた。

「『パッチギ!』っていう映画があるでしょ? 当時の僕はあれくらい悪くて不良やった。ケンカばっかりしてたけど、なんでケンカをするかというと負けたときの恐ろしさが怖いから。戦争も同じで、負けたり殺されたりするのが怖いから戦ってる。人間ってそんなもんだと思うんです。

 そういう自分の弱さを認めると、ものすごいエネルギーが湧いてくる。だから僕は、若者に僕の生き方を通して人生学を教えたい。一般的な若者にはもちろん、少年院の慰問にも行きたいと思ってます」

 最後に、75歳の今も第一線で活躍する元気の秘訣を尋ねたところ、こんな答えが返ってきた。

「人との出会いにウキウキするんです。それが僕の一番の健康法やなぁ。人にも仕事にもワクワクして、いつも何かに恋してる。だけど、僕にはリンダがおるからね。惚れたらあかんで(笑)」

来年4月、広島で5000人を集めて「人生金儲けやない人儲けやで!」講演会開催も予定

<取材・文/熊谷あづさ>

くまがい・あづさ ライター。1971年宮城県気仙沼市生まれ。埼玉大学卒業後、会社員を経てライターに転身。週刊誌や月刊誌、健康誌を中心に著者インタビュー、人物インタビュー、書評、医療・健康情報などの取材・執筆を手がける。著書に『ニャン生訓』(集英社インターナショナル)。