特別扱いされていないことがうれしかった
社会福祉士資格を、夫婦で取ったことも貴重な経験だ。
「福祉の全般的なことを学べるので、ふうかを育てるうえで何か役立つだろうと思ったんです。勉強してよかったのは、福祉の歴史を学べたことですね。
私たちは、今ある制度の中でどうするかを考えがちですが、歴史をたどると、人が考え、動くことで、少しずつ制度が整えられているんです。だから変えてはいけないものではない。小さい力ではあるけれど、私でも何かができる可能性があると思えたのは大きな収穫でした」
小学校で学ぶふうかさんから気づかされることもある。
ふうかさんは今、小学校4年生で、特別支援学級に通っているが、時々通常学級の子どもたちと同じ教室で学べるチャンスがあるという。
「いろんな人の意見が聞けて楽しいらしいんです。それに4年生にもなると、みなさんお口も達者になって、言い争いなどが起きるようで、あるときふうかが、クラスメートから“バカじゃないの”って言われたようなんです。
ショックを受けたのかと思ったら、“うれしかった!”って。乱暴な言葉なんだけど、自分に気を使わない、特別扱いをしないことがうれしかったって」
星野さんはそれを聞いて、“ハッ”とした。
「支援学級は手厚く、それぞれの子どもに合ったスピードでサポートしてくださるから、ありがたいんです。でも、ほかの世界を知る機会にはなかなか恵まれない。支援学級だと、先ほどのような口ゲンカにまで発展させないでしょうね。もちろんそれは大切なことなんです。
でも、娘のように少々のことではへこたれないガッツのある子にとっては、丁寧に守られない体験によって生じる喜びもあるのだということに気づかされました。と同時に親だけではできないことがあるんだな、というのも発見でした」
先ほど触れたインスタライブでもふうかさんは、「障がい(のあるなし)に関係なく、健常の子たちと一緒に授業を受けたい」と、インクルーシブ教育への希望を語っていた。
「そういう望みをふうかが持っているのならば、少しでも一緒に学べる時間が増えるように、学校の先生と相談しながら、彼女にとってよりよい学びの場をつくっていけたらと思っています」
本書の最後に、ふうかさんは、「10年後の自分へ」というタイトルで文章を書いている。テーマを考えたのはふうかさん。明るい未来を書いているのだが、では、星野さんが、もし同じタイトルで書くとしたら、どんな内容になるかを聞くと、次のような答えが返ってきた。
「彼女もコミュニケーション能力が高まったので、障がいの有無に関係なく、いろいろな子どもたちとの語り場ができないかなと思っているんです。勉強のことや思春期特有の心や身体の悩み、不安などを自由に話すことで、対処の仕方がわかったり、今、自分が何をすべきかという課題や目標も見えてきたりすると思うんです。
幸い、インスタグラムを通して知り合った中学生や高校生の先輩がいるので、そういう子と話せるプラットフォームをつくろうかと考えているところです」
本のタイトル『さいごにきみと笑うのだ』は、星野さんがもともと抱いていた希望の形だという。
「私は生きるって大変だと考えてきたほうなので、人生の最後は、“あー楽しかった”って言って終わりたいという思いがあったんです。ふうかと一緒に過ごす日常の中では時にケンカもあったりするけど、人生の最後を一緒に笑って迎えられたらいいなと思っています」
『さいごにきみと笑うのだ』
(小学館)娘のふうかさんの難病と共存しながらの生活を、母親・星野さんの目線で綴った本
<取材・文/西所正道>


















