映像の仕事に携わってきた村西さんは、海外の動画配信サービスの勢いに押されぎみである日本のコンテンツ業界には危機感を覚えているとも。
地上波テレビ局が追随できない背景
「今の日本のテレビは、コンプライアンスにがんじがらめになって誰が見るのか、誰のための配慮なのか、わからないような作品ばかりになっているように思えます」
こうした指摘は、テレビ局でドラマ制作をしてきた側には、どう映っているのか。元・日本テレビのプロデューサーであり、約250本のアニメやドラマを手がけてきた前田伸一郎氏に話を聞いてみた。
「アニメや実写ドラマ、映画の原作になるような日本の漫画は、世界でも通用する人気のコンテンツですが、最大の武器は“独創的なキャラの魅力”だと思います。そして“事実は小説より奇なり”と言われるように、最近では実話や実在の人物を描いた作品も多くなっています。これらの魅力的なキャラクターを創り出すノウハウと、実在の強烈な人物をモデルにするという日本発の企画が、特にNetflixなどの配信プラットフォームで実現され、海外でもヒットしているのではないでしょうか」
なぜ、この“勝ち筋”に日本の地上波テレビ局は追随できないのか。
「スポンサーやコンプライアンスが非常に厳しくなっているという面もありますが、根本的にはマーケティング主義、つまり大ヒット漫画などの、原作がある作品を優先して企画し、大手の芸能プロダクションによる発言力の増大に伴う企画決定システムなどの影響が大きいと思います」(前田氏、以下同)
人気漫画を映像化することは、視聴率の“見通し”が立つ一方、プロデューサー個人による“オリジナル”企画は、通りにくいという。
「かつて民放各局には2時間ドラマ枠という、単発ドラマの放送枠がありました。そこでは原作のないオリジナル脚本のドラマも数多く放送されましたが、コアターゲット、すなわち13歳から49歳の視聴者層を重視するために、2時間ドラマ枠が消滅しました。ほかにもネット配信コンテンツの台頭が要因の、視聴率低下に伴う制作費の削減なども影響して、単発ドラマは激減。ますます無難な連続ドラマ中心の企画に寄りがちになっているように思えます」
前田氏は、日テレで情報番組やアニメプロデューサー職を経て、ドラマのプロデューサーとして『火曜サスペンス劇場』やスペシャルドラマを担当。'04年に放送された松田聖子が主演のスペシャルドラマ『たったひとつのたからもの』は視聴率30%超というヒット作となった。
こうした実績があっても、局内で単発のオリジナルドラマの企画を実現させるのは大変だという。
「特に思い出深いのが、'06年に放送された、男性の身体でありながら女性の心を持った性同一性障害をテーマに企画したオリジナルドラマ『私が私であるために』という作品です。主演は、演技経験や知名度がなくても当事者自身が演じることに強くこだわりました。当事者本人の思いをゴールデンタイムの全国放送を通じて伝えたかったのです」

















