冒頭の『This is I』と同じテーマだが、20年前の日本は今ほどLGBTQの理解が浸透していなかった。演技の経験がない人が主演という面でも、この企画を通すのは難航を極めたという。

やりたい企画を通し続けることは、サラリーマンPには難しい

紆余曲折ありましたが、当時は2時間ドラマ枠があったおかげでスペシャルドラマとして実現。放送後、LGBTQの当事者たちから温かい感謝の言葉をもらいました。劇中で挿入歌を歌ったシンガー・ソングライターの中村中さんも、このドラマがきっかけで広く知られるようになりました。このドラマがデビュー作となった、ニューハーフタレントのたけうち亜美さんは『This is I』にも出演しています。自分のプロデューサー寿命を犠牲にしてでも放送できたことは本当によかったと思っています

Netflix映画『ThisisI』キービジュアル(公式サイトより)
Netflix映画『ThisisI』キービジュアル(公式サイトより)
【写真】独身時代、人気アイドルの元夫とラブラブデート中の戸田恵梨香

 前田氏は日テレを退職後、フリーのプロデューサーに転身。昨年は『私が私であるために』で描き切れなかった題材に重きを置いて、再び性同一性障害をテーマにした舞台の企画・演出を手がけている。

自分のやりたい企画を通し続けることは、サラリーマンプロデューサーには難しい。肌感覚でいえば、志を持って自分のテーマや意思を込める“作家タイプのプロデューサー”は、業界全体で5%くらいかと。そういう人たちが地上波のテレビから、独創性こそを重んじる海外の動画配信サービスに流出している側面もあると思います

 続々と制作されてヒットを飛ばす日本発の伝記ドラマ。その裏には、映像の現場の構造的な変化が大きく影響しているようだ。

村西とおる 黎明期のセクシービデオ業界に革新的なスタイルを取り入れ“帝王”と呼ばれるように。自身の半生が描かれたドラマ『全裸監督』は世界190か国に配信された

前田伸一郎 元・日本テレビプロデューサー。アニメ・映画・ドラマを中心に約250作品を制作。主な担当作は『ママは小学4年生』『愛の流刑地』『ヤング ブラック・ジャック』など