有名人の治療も担う第一人者に
センターでの経験は、物質使用障害治療プログラム(SMARPP)での開発にもつながっていく。失敗を責めるのではなく、なぜ薬物を使いたくなるのかを分析し、より安全な対処法を共に考える手法。テキストを使って、グループで話し合うものだ。
また、全国の精神保健福祉センターとつながっていくときにも役に立った。
有名人の治療をすることも。元プロ野球選手の清原和博の治療にも深く関わった。
「清原さんには逮捕から1年くらいたってから会いました。当時は重度のうつ状態で、自殺の危険があるように感じました。彼が正確にどの段階から薬を使ったか、僕にどこまで正直に言っているかわからないですが、ある段階から、『とっくの昔に彼はうつになっていて、それを抜けるのに覚醒剤がすごくマッチしていたんじゃないかな』と思うことがありました」
また、俳優の高知東生の治療にも関わった。
「彼は、厚生労働省の麻薬取締官に逮捕されたんですよね。その捜査官から僕をすすめられたらしいです。彼もすごいバッシングを受けていたから、もうあちこち逃げ回りながらの生活だったんですよね。でも予約の日にはきちんと来ていました」
そうした依存症者が回復するのを見守り続けるしかない面もある。
「激しいバッシングで、彼自身、世の中の全部を敵に回したみたいな感じに追い込まれていました。あれだけ騒がれた印象があるから、マスコミも使いたくてもできない。依存症が問題なんじゃなくて、お金がなかったり、住む家がなかったり、あと、人生の目標が見つからなかったり……。でもそれって医者がどうこうできなくて」
'20年3月、厚生労働省の依存症理解の啓発イベントに、松本さんのほか、清原と高知も登壇する。啓発の効果はあったのだろうか。
「有名人が『自分も薬をやめるために病院に通っている』と言うと、あ、『俺も行ってみようかな』と思う人が増えるんだなと思いましたよ。最高の啓発です。このときは、患者さんがちょっと増えましたね。有名人はやはり発信力があります。一般の人にとってみればわかりやすい。ただ、そういう(依存症の)看板を背負って生きていくのが本当にいいのかどうか」
'19年にピエール瀧がコカインを使用したとして逮捕された。一時期、診察をしていた。
「裁判の情状証人となって証言台に立ったというつながりがあります。彼にも、イベントでの登壇について打診したことがありました。しかし、彼は断りました。自分は薬物依存症ではないし、回復したとか、反省したとかはやりたくないと。それだけは嫌だと。彼はミュージシャンなので、それが正解だと思います」
一方、高知は「ギャンブル依存症問題を考える会」の田中紀子さんと出会う。そして啓発イベントに登壇したり、'24年に公開された映画『アディクトを待ちながら』で薬物依存から回復を目指す主人公を演じた。


















