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ー イギリス版『\マネーの虎』とは
日本とイギリスでは、金融教育のレベルが違うようで……(写真はイメージです)

日本社会の現状に、「遅れてる! 海外ではありえない!」なんて目くじらを立てている人もいますが……。いえいえ、他の国の皆さんも有名人や王室のゴシップや下ネタは大好きで、若者はおバカなことをしでかすし、高齢者は変なこだわりで周囲を振り回すし、しょーもない男女のケンカも日常茶飯事なんですってば! そんな、「衝撃」「笑える」「トホホ」がキーワードの世界の下世話なニュースを、Xで圧倒的な人気を誇る「May_Roma」(めいろま)こと谷本真由美さんに紹介していただきます。人間の思考回路や行動なんて、基本は一緒なんです!

 かつて日本のテレビ番組に、『\マネーの虎』(日本テレビ系)という番組がありました。起業したい人が、リッチな投資家(虎)たちの前で自分のビジネスアイデアや商品をプレゼンし、評価されればその場で出資をしてもらう─この番組は、そのフォーマットが人気を呼び、現在も「令和の虎」というYouTubeチャンネルにもなっています。

イギリス版『\マネーの虎』とは

 世界各国でも取り入れられ、ここイギリスでは『Dragon's Den(ドラゴンズ・デン)』という番組名でBBCが制作し、今なお人気番組として放送されています。

 番組の構成やルールはほとんど変わらないのですが、日本の虎たちはキャラこそ立っていましたけれども、中には「どこの誰?」みたいな人物もいましたよね。現在の「令和の虎」の「虎」たちも、本業よりもYouTubeなどのインフルエンサー稼業で集金している人たちが多いような……。

 一方、イギリスのドラゴンたちは、一般的に名の知れた企業の社長や役員が務めているため(皆さん、きちんとスーツを着用している!)、よりシビアな緊張感をもたらしています。

 実際、『ドラゴンズ・デン』をきっかけにヒットした商品やサービスは多く、一例を挙げると、人気レゲエ歌手がプレゼンした「ジャマイカ風BBQソース」は、イギリスの大手スーパーと契約し、有名ブランドに成長。

 また、現在では世界的に普及している髪が絡まないヘアブラシ「タングルティーザー」も、この番組から生まれたヒット商品です。もちろん、中には「ノーマネーでフィニッシュ」のケースもたくさんあるのですが、ドラゴンたちから門前払いされたにもかかわらず、その後独自に成功を収めたクラフトビールメーカーなど、実際にビジネスケースがたくさんあるというのが特徴です。

 そもそも、イギリスは世界的に見て起業しやすい国の一つです。イギリスには「個人控除」と呼ばれる非課税枠があり、2028年度まで約200万円前後は所得税なし。それを超える分だけ所得税が課されます。つまり、起業して所得が低い場合は、200万円前後まで非課税ですから、「とりあえず会社を設立するか」となりやすいのです。

 さらには、小学校で資金繰りやマーケティングを含めてプレゼンする授業が行われているほど金融教育が身近だったりします。私も学校で息子が金融教育を受けている風景を見たことがあるのですが、子どもにもかかわらず「それだと失敗すると思う」とか「私は○○だと思う。あなたの意見は?」など、大人顔負けでプレゼン&自己主張する姿を見て、司会の吉田栄作よろしく目を見開いたものです。

 失敗を恐れて従順になるのとは対照的で、こうした反骨精神が起業文化の一因ともいえますから、日本でも金融教育を取り入れたほうがいいかもしれません。そうしないと、『令和の虎』の「虎」たちのように、「ユーチューバーが小学生の一番なりたい職業」なんて世が続いてしまうのではないでしょうか。

谷本真由美 たにもと・まゆみ 1975年、神奈川県生まれ。著述家。元国連職員。ITベンチャー、コンサルティングファーム、国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。X上では、「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いポストで人気を博す。著書に『世界のニュースを日本人は何も知らない』シリーズ(ワニブックス【PLUS】新書)など著書多数

構成/我妻弘崇