騙されやすく、放っておけない人

 多方面に才能を発揮している土屋だが、素顔は気さくで、スタッフへの気遣いもこまやかで、誰からも愛される人柄だ。前出の佐伯さんは「360度に目があるかのよう」と土屋を評する。

「自分のことよりも周囲のスタッフをよく見ています。ロケ中、重い機材を持つADに『ごはん食べてないよね? 一緒に食べようよ』と声をかけ、疲れているスタッフがいれば『荷物を持ってあげるよ』と手を差し伸べたりするんです」

 中村あゆみも土屋のことを「本物の笑顔の人」「無条件に大好き」と言ってかわいがっている。一緒に食事をしてプライベートの相談に乗ることも多い。

「私もシングルマザーだったから、自分の若いころとオーバーラップするんです。『アンナがすごく頑張っているのはわかっているよ』と伝えたとき、アンナが泣き崩れたこともありました。私にとってアンナは“若いころに産んだ娘”のような感覚。彼女がこれからの人生を思い切り歩んでいけるよう、自分の持つすべての知識や経験を教えてあげたいと思ってしまうんです」

 なかでも土屋のもろさや騙されやすさを中村は心配し、アドバイスすることも多い。10年前には舞台降板をめぐって裁判になったこともあった。

4人の子どもたちと。ペットの犬や猫もいて、いつもにぎやかな家庭だ
4人の子どもたちと。ペットの犬や猫もいて、いつもにぎやかな家庭だ

「アンナは人を信じて疑うことを知らない。芸能界には損得勘定で動く人もいますが、アンナにはずるさが一切ないんです。ダメな男に惹かれたり、そこは私とも似ているところで(笑)。人を見極める力を身につけることと、自分の価値を安売りしない仕事の選び方を先輩として伝えています」(中村)

 純粋な土屋を利用しようとする人がいる中、絶対に裏切ることがない母をマネージャーにしたのは正解だった。25歳のときから16年、母・眞弓さんが仕事の管理をしてくれた。

「身内ではない人が自分を正してくれることはなかなかありません。自分に対して一切の遠慮がなく、何でも言ってくれる存在が母だったので、ママをマネージャーに選んだんです。ただ仕事をすると衝突することも多く、いいママだったけど、大嫌いな部分もいっぱいありました(笑)」

 眞弓さんは普通のマネージャーとは一線を画した存在だった。レッドカーペットに着物姿で同行し、時には娘より注目を集めることも。出会った人の顔と名前を決して忘れず、コミュニケーションの達人で、人脈をつくる天才でもあった。

 一方で、土屋の服のセンス、髪の色、話し方と、何かにつけて口を出してくる。大事なライブの直前に言い合いになることもあり、一度は距離を置く決断をし、離れていた時期もあった。しかし、再びタッグを組んだのは、ある現実的な判断からだった。

「私が働けなくなったら、周りのスタッフの家族までつらい思いをさせてしまう。そのリスクを考えたら、身内のママとなら一緒に倒れても問題ないんじゃないかと。私から戻ろうと声をかけました」