健太は菜乃子の夫となった仲間の達也に好意を持ち、長い間、密かに想い続けていた。
自身の経験や感覚を登場人物に投影
「以前、性自認や性的指向がわかるLGBTQの自己診断チェックを使ってみたことがありまして、性的マイノリティーの可能性があるという結果が出たんです。
私は結婚も出産も経験しているので100%異性愛者だと思っていたのですが、振り返ってみると女性が好きだった時期もあるんですよね。同じように揺らいでいる人が意外といるのかもしれない、という想いを健太に託したような感覚です」
5人の同級生の中で窪さん自身と重なる部分が多いのが、菜乃子の死後に小説家として世に出た倫子だという。第三話『空夜』では、高校時代から文章を書くのが得意だったものの、小説家という職業は遠い存在だと認識していた倫子の背景が描かれている。
「このあたりの事情は、私と倫子は近いと思います。私の場合、“この先、小説家という道はないのかな”と迷いながらライターとして働いていて、40歳を過ぎて“もう書いてもいいのではないか”と小説を書き、44歳でデビューしました。デビューの時期が遅いことも倫子と重なっています」
第三話の後半には、菜乃子の死後、「小説家になりたい」と口にする倫子に対し、祖母が次のように語る場面がある。《「倫子になれないものなんかない。倫子なら何にでもなれる」》
「若い方から深刻な悩みが書かれたお手紙を頂くことも多く、中には“小説家になりたい”というお手紙をくださる方もいらっしゃいます。そうした想いを抱える方たちに、『なれなかったとしても、何にでもなれるよ』と伝えたいんです。
『なりたいものになれなくても大丈夫で、その人生も全然ありなんだよ』ということを、この本の中で伝えたいと思いました」
第四話『石榴色の雪』は菜乃子と高校時代から交際していた達也の視点で、第五話『芍薬の星月夜』は死後の菜乃子の視点で物語が展開する。同級生4人のエピソードから想像する菜乃子は聡明で繊細で、生きづらさを抱えた女性だが、幽霊となった菜乃子は生前よりも活力があふれているように感じられる。
「私自身、大切な人を亡くしたあとに、ふと“あの人は生きている”と思う瞬間があるんですよね。職業的に想像力が異常に膨らんでいるせいかもしれないのですが、ふいに気配を感じたりとか、原稿を書いている様子を見られているような気持ちになることがあります。だから、死者が“生き生きと死んでいる”という情景にしたかったんです」

















