認知症判明後も立ちっぱなしで接客
認知症の判明後も変わらず店に出ているという文子さん。矢部さんがSNSで文子さんの認知症を公表すると、心配する常連たちが多く店に駆けつけた。
「店に来るとシャキッとスイッチが入るので、家にいるときとはまるで別人。認知症だとは感じさせないんです。ママ元気じゃん、まったくわからないね、本当に認知症なの?っていまだにお客さんたちに言われます」
若いときは自身がスナックを経営していたこともあり、サービス精神旺盛の文子さん。店では営業時間中立ちっぱなしで接客をこなし、常連たちはもちろん、新規客の名前も覚えるという。
「本当は夜遅くまで起きているのはよくないけれど、ママの場合は店にいて人に見られていたほうが生き生きしている。この生活が一番今のママにとってプラスなのだと思う。店はママのステージみたいなもの。店がなかったら、もっと症状が進んでいたでしょうね」
認知症薬を飲みはじめて数か月がたち、暴食や電話の回数も目に見えて減ってきた。症状はひとまず落ち着いているが、それでも先々の不安はある。
「店も最近新規のお客さんが増えてきたところで、できればあと3年、20周年までは続けたい。ただ、それもママの状態次第で、これからどうなっていくのか。ずっとこのままでいられるとは思えない。店の女の子たちにも、すぐに閉じることはないけれど、一応頭に入れておいてくれる?って伝えています」
認知症患者の介護年数は6~7年が平均で、10年以上に及ぶこともある。長期戦であり、先が見えないのが認知症介護の難しさ。矢部さんも今それを実感していると話す。
「今は初期だけど、施設に預けなければいけなくなったら大変。妹や弟と、いくらかかるのだろう、いくら出せる?なんて話し合いもします。ただ、ママの場合は店がリハビリになっている。店をやっていて良かったなって、改めて感じます。病気は治らなくても、今の時間が少しでも長く続いてくれたらと思っています」
文/小野寺悦子












