医師以外のスタッフも全員で患者の情報を共有
さらに「しろひげ」では、「スタッフ全員の意識や情報の共有」を図るため、毎日朝8時に30~60分の朝礼を行っている。そこで担当医が前日の診察について報告する。
〈昨日は4件、往診に行ってまいりました。44歳の男性***様なんですが、昨日の朝からお腹が痛くて吐き気がするということで、昼過ぎに行ってまいりました……〉
どういう治療をしたのか、家族の反応はどうか、今後どういう治療方針かなどを説明し、申し送りなどもする。担当医の報告を看護師だけでなくドライバー、事務職員も聞く。担当医の代わりに診察に行く場合でも、患者さんのことが念頭にあるのとないのとでは違ってくるからだ。ドライバーや事務職員もそれぞれの患者さんの状態を知っていたほうが、適切な動きができ、医療チームとしての一体感が生まれるという。
もし、診察報告を聞いて、担当医の対応に問題がある場合は、山中さんが問題点を指摘し、厳しく注意することも。
「悪い事例は教訓として共有するんです。僕が緊張感を持ってやっていることが医師だけでなく、全体に伝われば意識も変わってきますからね」
そもそも医師は批判されることを好まないことをよく知っているから、あえて厳しい対応をするのだという。
「医師というのは存在自体が“パワハラ”という側面があるので、そういう医師を放置すると、患者や家族からクレームが来ても、看護師や事務職員が医師に知らせない判断をするかもしれないんです」
こうした朝礼を毎朝行い、繰り返し山中さんの在宅医療に対する思いに触れることで、職員の意識も変わり、「しろひげ」の文化になるのだ。
ただ、これほど在宅医療のレベルを上げようとしても、また山中さんが『「家で幸せに看取られる」ための55のヒント』という著書で啓発しても、在宅医療がどんな治療を提供しているのかが、世間になかなか浸透しない。
恵子さん(60代)もその一人だった。母親を「しろひげ」で診療してもらおうと思い、山中さんにこう尋ねた。
「私はきょうだいがおらず、夫もおらず親族が少ないので、ほぼすべてを自分がやらなければなりません。それでも家で母を介護できますか?」
山中さんは「もちろんできます」と即答した。
「訪問看護師がたびたび入りますから、介護の負担は重くはなりません。病院で行う治療のほとんどは在宅でもできますよ」
恵子さんが在宅医療を検討するきっかけになったのは、パーキンソン病を患う母親が大腿骨頸部骨折をしたことである。手術を受け、入院していたのだが、その間に認知症の症状が出てきた。
「知り合いには“施設に入れたら”と言われました。でも私の個人的な考えですけど、施設に入れると母の生きる力が失われそうな気がしたんです。私が作った料理を食べさせたほうが生きる力を与えられるのかなと」(恵子さん)
そうして始まった在宅医療は、どうだったのだろう。
「心配していたほど大変ではなかったです。看護師さんはまめに来てくださるし、お願いすれば何でもサポートしていただけます。みんなフレンドリーなので何でも話せますから、悩みとか、わからないことが出てくるんですが、パーフェクトに対応していただいています」(同)


















