5編の物語は5つの都市を舞台に
1編目の「オスロで光の種をまく」は、ムンクの〈叫び〉が主人公に希望をもたらす、ノルウェーが舞台の物語。4編目の「千年のあこがれ」は、エドゥアール・マネの〈スミレの花束をつけたベルト・モリゾ〉の絵を軸に、昭和初期の京都が舞台になっている。
「5編を通していろいろな都市を出そうと考えて、日本は故郷の京都にしました。またムンクの絵を取り上げたくて、北欧には行ったことがありませんが、オスロを舞台にしました。ムンク美術館を訪れたことがあるという担当編集者さんから情報をいただき、自分でも調べて美術館の場面を書きました」
本作は、一色さんの次のような思いが込められている。
「芸術品には特別なものというイメージがあり、敷居が高く感じられるかもしれません。でも実は、大切な人が亡くなって悲しいとか、幸せを感じてうれしいとか、どの絵画も普遍的なことを描いているんです。
芸術品は私たちが普段、慌ただしく日常生活を過ごす中で曖昧になりがちな感情や気持ちを思い出させてくれるもの。このことが、本書を通して少しでも伝わればいいなと思っています」
最近の一色さん
「5年ほど前に庭のある家に引っ越しまして、家族みんなで花や野菜を育てています。素人なりに楽しく取り組んでいるのですが、虫の駆除が思ったよりも大変で……。最近は、クチナシの木につく蛾の幼虫と闘いを繰り広げています。畑ではきゅうりやトマト、スイカなどが育っていて、夏野菜を収穫して食べるのが今から楽しみです」
一色さゆり(いっしき・さゆり)/1988年、京都府生まれ。東京藝術大学美術学部芸術学科卒。香港中文大学大学院修了。2015年、『神の値段』で第14回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。著書に、『コンサバター 大英博物館の天才修復士』をはじめとする「コンサバター」シリーズや、『音のない理髪店』『モネの宝箱 あの日の睡蓮を探して』『ピカソになれない私たち』『光をえがく人』『カンヴァスの恋人たち』などがある。
取材・文/熊谷あづさ



















