「頭上に滝つぼ」「凍る水槽」で集客15倍!

計画する水槽の展示意図を明確にするため、その地域の景観や生物の行動を観察する潜水調査
計画する水槽の展示意図を明確にするため、その地域の景観や生物の行動を観察する潜水調査
【写真】弱点を武器にした『サンシャイン水族館』天空のペンギン&アシカのアクアリング

 '12年にリニューアルした北海道にある「北の大地の水族館」でも、その理念を証明してみせた。

 当時「山の水族館」という名称で、年間入館者1万9000人だったこの水族館にはいくつもの弱点があった。まず資金がない。移転新築には通常数十億円はかかるのに、予算はわずか3億円。スター的な魚はおらず、目玉といえば体長1メートルを超える20尾のイトウ程度だった。

「断ろうと思ったんです。失敗する可能性のほうが高かったからね。予算的にも十分なリニューアルなんてできっこないし。でもね、担当者のことがかわいそうで」

 唯一素晴らしいと思ったのは豊富できれいな地下水。それを大水槽に入れてイトウを展示する。長径7メートル、短径5・5メートル、深さ1・9メートル、水量50トン。イトウの水槽としては日本最大だ。また、来館者の頭上を滝つぼにし、激流をつくる滝つぼ水槽も考案した。北海道だけに生息するオショロコマを見てもらう仕掛けだ。

 オショロコマが滝の飛沫と激流の下に集まってきらめく様を滝つぼの下から眺められるのは、世界で初めての試みだった。

「水槽は、ろ過装置にお金がかかるんですが、ここは地下水を掛け流しなので、お金が節約できたんです」

 もう一つは寒くて水が凍ることを逆手にとった、世界初の「凍る水槽」である。

「真冬になるとマイナス20度にもなる、どこの水族館にもマネできない環境が見事、武器になったのです」

 外に穴を掘って水槽をつくり、川に見立てた。川の周囲に土を積み、近所の人たちが持ち寄った木や花を植えて野生の雰囲気に。川には、ウグイ、ニジマス、アメマス、ヤマメ……。どれも珍しい魚ではないが、凍る水槽には映えた。

 この水族館もメディアにたびたび取り上げられ、15倍の30万人が来館した。